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「彼氏(彼女)いるの?」という言葉にひそむ「生きづらさ」

 
昨日、こちらの記事を読みました。
 
▼セクシュアル・マイノリティーと引きこもり 異性愛前提の社会に生きづらさを感じる人たち|「引きこもり」するオトナたち|ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/63541
 
「性別欄に“自身の性別とされているもの”が表記されなければならない社会」=「異性愛が前提になる社会」に生きづらさを感じる・・・という「セクシュアル・マイノリティー」の当事者の声が取り上げられています。
 
※「セクシュアル・マイノリティー」=「性的少数者」という表現は好ましくないとする意見もあるため、この記事ではLGBT(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダーの頭文字)という言葉を使います。興味のある方は、下記サイトをご参考に!
 
▼NHKオンライン | 虹色 – LGBT特設サイト
http://www.nhk.or.jp/heart-net/lgbt/index.html
 
※最近ではLGBTQという言葉が使われることもあります。「Q」は「Queer」 (もともとは「変わり者」。セクシャリティの文脈では「個性的」という意味で使う人もいます)もしくは「Questioning」(不明)。
 
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photo by donv.org

 
わたしは今、英国・イングランドに留学していますが、会員登録などの際に自分の性別を記入する欄を見ると、「男性/女性」の二択だけでなく「どちらにも当てはまらない」「明言したくない」などの選択肢が用意されていることが多いです。
「そんな些細なこと…」と言う人もいるかもしれませんが、そういうちょっとした配慮があるだけで生きやすくなる人もいるだろうな、と上の記事を読んであらためて思いました。
 
【追記】Google+のユーザー基本情報において、性別を‘明言しない’(decline to state)など自由にカスタムできるようになったそう。Googleは、以前からLGBTに対して強い理解を示している企業ですね。
 
▼Google+でもジェンダーの表現が自由になった…Facebookよりも大幅に自由 – TechCrunch
http://jp.techcrunch.com/2014/12/11/20141210google-plus-custom-gender-identification/
 
個人的な感覚ですが、日本と比べるとイギリスの方が自分が同性愛者であることを公言している人が多い印象を受けます。駅など公共の場で、男性同士がキスしている光景も珍しくありません(そして特にそれを不思議がる人もあまり見かけません)。
 
ちなみに英国における同性婚を認める法律の成立状況は下記のとおり(いくつか追記しました)。
 
☆イングランドとウェールズ:2013年7月に可決、2014年3月に施行。
→参考記事:Same-sex marriage becomes law in England and Wales – BBC News (17 July 2013)
 
☆スコットランド:2014年2月に可決、2014年12月に施行。
→参考記事:Gay marriage law comes into effect in Scotland – BBC News (16 December 2014)
 
☆北部アイルランド:同性婚は法律で認められていません(2011年~シビル・パートナーシップ制度を導入)。2014年5月、アイルランドで同性婚解禁に向けた憲法改正の是非を問う国民投票が行われます。
→参考記事:Same-sex Marriage Referendum – The Irish Times
 
少しずつ社会的に認められてきている同性婚ですが、宗教などを理由に反対の立場を取る人もいます。今年10月にバチカンで行われた「世界代表司教会議」(シノド: カトリックの枢機卿や司教らによる集会)では、フランシス法王による同性愛への歩み寄りの姿勢に注目が集まりました。中間報告では、
 
Homosexuals have gifts and qualities to offer to the Christian community(同性愛者はキリスト教コミュニティーに貢献する才能と資質を持っている)
“accept and value” homosexuals(同性愛者を受け入れ、価値を認める)
 
との文言が盛り込まれましたが、保守派の反対が根強く、報告書の承認に必要な3分の2の同意を得られなかったため、最終報告では、
 
men and women with homosexual tendencies should be accepted with respect and sensitivity(同性愛の傾向を持つ男女は、敬意と配慮を持って受け入れられるべき
Any sign of unjust discrimination in their regard is to be avoided(同性愛者に対するいかなる不正義な差別も避けられるべき)
 
と記されるにとどまりました(司教会議は1年後にまた開催され、最終決定が下される予定です)。
 
▼BBC News – Catholic synod: Gay rights groups ‘disappointed’
http://www.bbc.co.uk/news/world-europe-29678751
 
・・・話が広がってしまいましたが、イギリスで市民(シティズンシップ)教育、特に人権教育について勉強しているわたしにとって、LGBTは今後日本でも理解が進むべきテーマだと思わずにはいられません。身近に当事者がいないとなかなか意識しづらいことかもしれませんが、実は日本でも20人に1人はLGBTと自認する人がいるという調査結果(※)があり、割合だけで言えば学校のクラスの中に1~2人はLGBTの生徒がいると考えることもできます。
※電通総研LGBT調査2012(http://dii.dentsu.jp/project/other/pdf/120701.pdf
 
セクシュアリティに限らず、ますます多様化が進む中で、「生きづらさ」を取り払ってみんなが社会参加できるよう、制度面でも整えていかなければいけない課題がたくさんあります。でもまずは、一人ひとりの意識を少しずつ変えていく必要があると思います。たとえば、小さなことですが、ゲイを公言している知人が「彼女いるの?」ではなくて「恋人(パートナー)はいるの?」という聞かれ方をされると答えやすい(※)と言っていたので、私も(相手の状況を知らない場合は)そのような表現を使うように心がけています。また、教育を通して子どもの頃から「人権」について考える機会を増やしていくべきだとも思います(人権教育については、また別途記事を書きたいと思っています)。
 
※この記事を読んでくださった方から、「英語ではどんな風に聞けばいいの?」とご質問をいただきました☆
ネイティブの友人にも確認を取ってみたところ、“Are you seeing someone?”“Do you have a partner?”といった表現がニュートラルだそうです。でも「(イギリスだと)たとえ質問の仕方が正しくなくても『girlfriendじゃなくてboyfriendがいるんだ』って普通に訂正して答える人も多いし、失礼にあたるかどうかそんなに気にしなくてもいいかも?」とのこと。個人差はあると思いますが、日本よりもオープンなのでしょうね!
 
私がこれまでいろんな国を旅し、多くの人に出会い、そしていま留学に来ている中で感じるのは、「自分が思っている以上にいろいろな生き方がある」ということ。中には、「価値観が違いすぎる・・・」と思うこともありますが、無理に合わせる必要はないと思っています。「そういう人生もあるんだなぁ」と受け止め、素敵だなと思ったところは吸収する。100%理解できなくても、相手に対して敬意を払う。違いをきっかけに自分の生き方を考えたり、たまに似ているところを見つけて笑い合えたら楽しい。
 
あ、でも海外で共同生活をしているとたまに本当にイラッとすることもありますが、ここでは省略させていただきます(笑)。