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秋学期の成績発表と、ひそかな野望について。

 
秋学期(Autumn term:10~12月)の成績が、2月中旬に発表されました!
 
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[Photo via everycollegegirl.com]  
 
わたしのメインモジュールは、エッセイ(レポート)が2本と、試験が1つ。
それぞれの結果と教授からのフィードバック、イギリスの大学院の成績基準などについてご紹介します!
 
☆それぞれのモジュールの具体的な授業内容については、以下の記事をご覧くださいね。
>>秋学期(9~12月)の授業&活動まとめ
 
■大学院の成績基準について
試験もエッセイも、50点以上で合格です。合格・不合格の中で、次のようにランクが分かれています。
 
☆Pass(合格)
Distinguished*(優) 100 – 70 *Distinctionと同じ。
Merit(良) 69 – 60
Satisfactory(可) 59 –50
 
☆Fail(不合格)
Marginal fail(埋め合わせ可能) 49 – 40
Outright fail (埋め合わせ不可)Below 40
 
エッセイの場合、70点以上取れれば上出来、80点代はネイティブでも滅多に取れないという基準なので、日本の大学の成績評価と比べると、「え?!こんなに低いの?!」と驚かれるかもしれません(ただし、ペーパー試験やプレゼンテーション、グループプロジェクトなどでは80点以上取ることも可能だと思います)。
 
なお、評価基準は細かく分かれていて、あらかじめ学生にも公表されています。エッセイで言うと、「内容・議論」「構成」「レファレンス(参考文献)等の使用」「語彙と表現」「文法」の5つのセクションごとに点数が付けられ、総合点数と全体のフィードバック(教授からの評価コメント)が返却されます。
 
ちなみに、試験もエッセイも自分の氏名を書いて提出することは禁止されており、試験番号のみ記入することになっています。つまり、評価の公平性を保つために、匿名で点数を付けられるということです。
実際は、誰が描いたのか、エッセイの内容からある程度推測できる場合もあると思いますが(例えばわたしは、クラスで唯一の日本人学生で、日本の人権教育をめぐる課題について書いたので、バレていることは間違いない。笑)、基本的には採点者には分からないよう配慮されています。
 
■わたしの成績発表!
こんな風に、オンラインで結果を見ることができます。不合格になることはまずないだろうと思ってはいたものの、やはり確認する瞬間はドキドキ。
 
Term1 Module Results
 
やったー!最高ランク(Distinguished)が2つと、2番目のランク(Merit)を1つもらえました!
 
エッセイについては、オンラインの結果だけでなく教授から個別のフィードバックをいただいているので、その全訳を(恥ずかしげもなく・・・)ここで公開します。将来、イギリスの大学院で勉強したいな、という方が少しでも雰囲気をつかめればと思います。
ただし、試験(リサーチ・メソッド:72点)については特に個別フィードバックはないので、ここでは省略します。
 
①Citizenship education(シティズンシップ教育):70点(Distinguished)
わたしのコース(グローバル市民教育)の必須モジュール。わたしは「シティズンシップ教育に関するイングランドのナショナルカリキュラムと日本の学習指導要領の比較検討」というタイトルでエッセイ(5,000語)を書きました。実は、担当教授が支持しているバーナード・クリック(イギリスがシティズンシップ教育を正式教科として導入する際、政府のアドバイザリーグループの座長として貢献した人)の施策を真っ向から批判する内容なので、教授にどう評価されるか内心ドキドキしていたのですが、思い切って書いたところ意外にも良い点数をもらうことができました。
 
***教授からのフィードバック***
☆Searching sources(情報源の探究)
素晴らしく幅広い資料を読み込んでおり、英語・日本語両方で書かれた文献を良く使っています。異なる分野の最新データや文献(政府資料から学術資料まで)を使っていることが評価に値します。
 
☆Analysing data and ideas(データとアイディアの分析)
とても良く書かれたエッセイです。重要な用語について明確なアウトラインを示し、相違点と類似点について興味を引き付けることで、あなたが選んだトピックの背景について注意深く描写しています。全体的に、あなたの議論は説得力があります。
 
私が思うに、あなたはOsler, Starkey, Figueroaによって主張されている立場の込み入った部分を、うまく言い紛らわせてしまう傾向があります(※おっしゃるとおり、この3人の主張の一部に偏りすぎたかなという反省あり)。Crick(クリック)は現代におけるシティズンシップの特性を明確に表さなかったという意味で責任があったかもしれませんが(※これはわたしのクリック批判(多様性尊重という視点の不足等)を受けたコメントです)、多様性に関する特定の問題への注目度を高めようとしていた圧力グループのアクションに対して抵抗しようとしていた、とも言えるかもしれません。
 
Kiwanの文献(特に人権教育について書かれたもの)とCrickの’essays on citizenship’(’friendly arguments’の章は大変興味深いです)をさらに読んでみると良いでしょう。
 
イングランドと日本の比較をする際に、各国の状況を個別に述べるよりも、ある特定の課題やテーマに絞ってもっと明確に議論を展開することもできたかもしれません。
 
☆Written communication(ライティングによるコミュニケーション能力)
ライティングも構成も良くできているエッセイです。
 
☆Other comments on the assignment(その他のコメント)
あなたは重要なトピックについて効果的に取り組みました。
 
☆Targets for improvement(改善に向けた目標)
Osler, Starkey, Figueroaの立場に反する主張についても考慮しましょう(また他の立場についても気を配ること)。これらのテーマについて、国家的な文脈ではないエッセイの構成も考えてみましょう。
 
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②Education and Social Justice(教育と社会正義):69点(Merit)
選択モジュールとして取っていた授業。「社会正義と人権尊重の促進は、教育者の役割か?」というタイトルを選んでエッセイ(5,000語)を書きました。日本の部落問題・同和教育を例に挙げ、人権教育をめぐる政治的対立について論じました。書いていて、私自身もかなり楽しかったですし、proof reading(文法やスペリングのチェック)をしてくれたネイティブスピーカーの方も「興味深い内容だった」と言ってくれたエッセイだったので、結構自信がありましたが・・・「私が70点以上を付けることはめったにない。昨年の最高点は69点」と教授が言っていたとおり、70点の壁を越えられませんでした(悔しい!)。でも期待通りの評価がもらえて自信に繋がりました!
 
***教授からのフィードバック***
☆Searching sources(情報源の探究)
人権教育についての定義と異なる視点を述べるにあたって、政策、経験に基づく情報源(ソース)の両方を上手く活用できています。
また、テーマについて詳しく言及することで、異なるソースに関するあなたの分析を完全に裏付けている点が評価できます。あなたはAPAスタイル(※教育分野の学生が使わなければならない、引用スタイル)に正確に、そして一貫して従っています。
 
☆Analysing data and ideas(データとアイディアの分析)
あなたの導入章(イントロダクション)は素晴らしいです。エッセイの背景(コンテクスト)と議論の要点を明確に述べています。
 
この複雑な課題に対する様々な視点について、完全に考慮できています。そのことによって、人権教育とそのメリットに関する単純かつ理想論的な議論の展開を回避できています。
 
あなたは、人権について(about)/のために(for)教えることの区別に触れています。その議論への理解を容易にするために、日本における大変興味深いケース・スタディ(※部落問題・解放運動を例示しました)を用いています。しかしながら、学術的な分析や批判の参照が不足しているため、やや記述的な議論に陥ってしまっている所が見られました。
 
☆Written communication(ライティングによるコミュニケーション能力)
あなたのライティング・コミュニケーションは大変素晴らしいです。あなたの文章は流暢で、文法もスペリングも間違いがありません。
また、流れるような明確な議論を組み立てるために、適切な言語を用いています。
このエッセイを通して、あなたの「声」がはっきりと聞こえてきて、熱烈な興味と自信を持って書いていることが伝わります。そのため、読み手を楽しませることができています。
 
☆Other comments on the assignment(その他のコメント)
(特に記述なし)
 
☆Targets for improvement(改善に向けた目標)
記述的な議論を避けましょう。ケース・スタディを引き合いに出したり、具体例を挙げる時にも、あなた自身の議論をサポートするために学術的な分析や議論を活用するように心がけること。
 
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■まとめ。
今回、イギリスの修士課程で初めて、エッセイ課題に成績評価が付けられました。そこから学んだ、高評価を得られるエッセイのポイントを自分なりにまとめてみます。どれも当たり前と言えばそれまでなのですが、やってみると簡単ではないものです…。
 
■「記述的(descriptive)」ではなく「分析的(analytic)」に。
・・・5,000語(A4用紙1枚およそ250語とすると20枚)のエッセイを1本書くために、少なくとも30以上の文献や資料を読み込むのですが、いろいろ読んでいざまとめようとすると、「この学者はこう言っています、他の人の意見はこうです、結論はこれです」と既存の議論をうまくまとめただけのエッセイになってしまいかねません。
でもそうではなく、「こういう主張が出されています、でもこういう批判も考えられます」と自分なりの新たな視点を加えて議論を展開しなければ、高評価はもらえません(もちろん、それを裏付けるための学術的な論拠がさらに求められるのですが)。
 
実は、学期の途中でアウトライン(1,000語)を出した時点では、どちらのエッセイも「良く書けているけれど、記述的すぎる(批判的分析が足りない)」という指摘を教授から受けていました。それでも合格点(50点)はもらえるのですが、70点を取るためにはもっと分析的な議論が必要だと言われたので、冬休み中は文献を読み漁り、「この学者が言っていることや、世間的に評価されていることは、本当に正しいのか?」という視点で自分のアイディアを組み立てるようにしました。
 
■お行儀の良いエッセイよりも、教授に挑戦を挑むつもりで。
・・・前にも少し書きましたが、わたしの必須モジュールである「シティズンシップ教育」のエッセイでは、(最初はそんなつもりはなかったのですが、最終的に)教授が支持しているクリック・レポートを批判的に考察しました。教授の立場に真っ向から異を唱える内容だったので、論拠不足な部分はすぐに見抜かれる(つまり点数に繋がらない)だろうな・・・と内心怯えていたのですが(笑)、返却されたペーパーを見てみたところ、挑戦的に議論を展開した部分ほど教授のチェック(=高評価のポイント)が付けられていました。日本では「いかに正解に近い答えを出すか」にこだわってきたように思いますが、日本の学校で良い点数がもらえる「作文」とイギリスの大学院で高評価が付けられる「エッセイ」は明確に異なるものだということを実感しました。
 
■「書きやすそう」なタイトルよりも、読み手に熱意が伝わる「書き甲斐のある」ものを。
・・・特に今回、「教育と社会正義」のエッセイでは、私が元々強い問題意識を持っている人権教育について取り上げたので、かなり熱が入りましたし(文字通り、知恵熱が出るんじゃないかと思うぐらい、書いていて興奮しました笑)、書き終えた後の手応えもありました。そのため、「読み手を楽しませている」という教授からのコメントは、本当にうれしかったです。
 
自分でタイトルを考えられる修士論文と違い、学期末に課題(assignments)として出されるエッセイのタイトルは教授から与えられた複数の候補の中から選んだものです(※自分で考えるモジュールもありますが)。数週間かけて執筆するエッセイなので、「書きやすそう」に見えるタイトルよりも、「書き甲斐がありそう」なものを選んで、苦しみながら書く方がよほど身になると思います。その点、「イギリスのシティズンシップ教育と比較することで、日本の教育について客観的に研究したい」という明確な意思を持って大学院留学して正解でした(書きたいテーマがある程度決まっているので、熱意を持ってエッセイに取り組めるからです)。
 
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さて、やっと秋学期の成績が返却されたところですが、あと3週間で春学期が終わり、次の課題が待ち受けています。また引きこもりの日々が始まる・・・(笑)。決して楽ではありませんが、今回で何となくコツがつかめたような気がするので、気持ちに少し余裕が出来たかな?
 
実は、わたしには一つ大きな目標があります。それは、
MA with Distinction(「優」評価の修士号)を取ること
です!
そのための条件は、「修士論文を含めて、全モジュール平均で70以上のスコア」
わたしの秋学期の成績平均は、(72+70+69)÷3=70.3・・・ギリギリ!
なので、春学期はこれ以上の成績を取れるよう、引き続き頑張ります。