2年前(2013年)にバングラデシュ・ダッカ郊外の縫製工場崩落事故が起きた今日、4月25日はFashion Revolution Day(ファッション・レボリューション・デー)ということで、日本、イギリスを含む世界66ヶ国で、#whomademyclothes(わたしの服を作ったのは誰?)のハッシュタグを付けたSNSキャンペーンが展開中です。
ファッションレボリューションのきっかけとなった縫製工場の崩落事故は1,133人の犠牲者と2500人以上の負傷者を生み出した。その工場ではアメリカの小売大手ウォールマートやイギリス発のファストファッションブランドのプライマークなど大企業の製品も含めて生産されていたことが後に判明した。
労働者の多くは低賃金でほとんど休憩なしの長時間労働を強かれていたことも浮き彫りになりファッション業界のサプライチェーンにおける透明性が問われる事態となった。透明性はファッションレボューションが業界に訴えようとしているのものでもある。透明性が増すことによって、どこでどのように作られた原料からどの国の縫製工場で生産されどのような過程を経て販売されているのかが明らかになることが期待できる。
(抜粋:SNSでファッション業界のあり方問う ムーブメントは世界66カ国に | オルタナS)
わたしが暮らしているイギリスは、「エシカル(※)先進国」と言われることも多いですが、いわゆる「ファストファッション」と言われるブランドも人気です。
※エシカル(Ethical):直訳すると「倫理的な」という意味ですが、「環境や社会に配慮されている」姿勢や商品を表す言葉として使われています。
例)児童労働などの搾取がなく、生産者の安全な労働環境や人権を守ったうえで、正当な価格で取引されたフェアトレード商品など。
わたしは、Webマガジン「Huglobe!」などを通じてエシカルファッションについて積極的に発信してきた方だと思います。でも、貧乏留学生としてイギリスで生活する中で、なるべく価格の安いものを選ばざるを得ないこともあって、日本にいるとき以上にジレンマを抱えています。
Photo from spadesandsilk.com
大学生のとき、セルビアの難民キャンプや、子どもの権利を守るために活動する国際NGOでボランティアをしていたわたしは、いわゆる「国際協力」に燃えていました。だから、そういった活動に参加していない友人にも、自分が強い関心を持っている貧困や児童労働などの課題について話すことがありました。
でもそのときに、
「そんなこと言われたって、今の時点でわたしにはどうすることもできない。ボランティアする時間も、寄付するお金もない。でもその問題について少し知ってしまったがために、罪悪感だけ残るじゃない!」
と言われ、ハッとさせられたことがありました。
「かわいそう」ではなく「かわいい!」というキーワードをフックに、普段の生活に結びついた「買い物」を通じてソーシャル・アクションを促すWebマガジンを作ろうと思ったのも、そういった経験があったからです。
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「社会的課題解決の一歩は、まずはその課題を知ること」
とは良く言いますが、知ってしまったがために、「それに対して何のアクションも起こさない自分」に気付いて、罪悪感が大きくなることもある。
わたしも、今それと同じ状況。ファストファッション産業の背景にある、労働搾取などの問題をある程度理解しているからこそ、経済的な理由から個人の生活を優先させざるを得ないとき、気持ちがズンと重くなる。
単価の安い食料(チョコレートやバナナ、紅茶など)はなるべくフェアトレード商品を買うようにしていますが、それすらも、「洋服はファストファッションブランドしか買えないけど、フェアトレードのものもちょこちょこ購入しているからOK」と自分を納得させるための行動に思えてきてしまったり。
今回のSNSハッシュタグキャンペーンも、同じような理由で、「エシカルな選択ができていないのに、こういう拡散キャンペーンだけ乗っかるのは気が引けるな・・・」という個人的なモヤモヤから、悩んだ結果、参加しませんでした。
ヨーロッパに比べると、まだまだ日本では、エシカルの市場規模が大きくないので、「簡単に買えないから仕方ない」という言い訳が通用するかもしれない。
でも、手軽にエシカルな商品を購入できるイギリスにいるからこそ、「選びたい」のに「選べない」というジレンマに悩まされる。
「知らない方が幸せ」だとは思いません。見て見ぬふりをするよりも、知ろうとする人生の方が豊かだと、個人的には思います。
でも、選択肢が多いがゆえに生まれてしまう苦しみもある。エシカルに限らず、さまざな場面で言えること。
このことについて、くるっと綺麗にまとまった結論は、書きません(書けません)。
ただ、Fashion Revolution Dayを機に、エシカルに対する現時点の自分の素直な気持ちを綴っておきたいなと思ったのでした。