DEAR(開発教育協会)の会報誌「DEARニュース」で、隔月の連載記事を持たせていただいています。
タイトルは、【ヨーク大学院留学記〜イギリスに学ぶ地球市民教育〜】。
本来、DEAR会員限定の出版物なのですが、発行後に許可を得たうえでこのブログでも寄稿記事をご紹介します。
今回でいよいよ最終回です^^
☆これまでの連載記事は、「DEAR連載」のタグからまとめて読めます。
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■第5回 シティズンシップ教育の実践に求められるファシリテーション能力
シティズンシップ教育は、子ども・若者たちが現代社会について理解し、積極的に社会参加するための知識とスキルを身に付けることを目的としています。それを教育現場において実践するうえで避けて通れないのが、物議をかもす/論争を招くイシュー(Controversial issues)です。
平たく言えば、善悪の判断をつけるのが難しく、賛否両論生まれやすいセンシティブな問題。たとえば、ジェンダー、文化、宗教、政治にまつわるイシューの多くは個人の価値観や信条の差異によって意見の相違が生まれることが多く、取扱いが難しいと感じる人も多いかもしれません。しかし、シティズンシップ教育では、子どもたちがこうした問題について異なる価値観を持つ他者と話し合い、クリティカルシンキング・スキルを身に付けることが望ましいとされています。
[写真]イギリスでは今年、5年ぶりの総選挙が行われました。授業でも政治の話題が良く挙がり、自分が支持している政党を公言する講師陣も多かったです。写真のように、大学のキャンパス内に投票所が設置されていたことで、選挙を身近に感じた学生もいたのでは?
「価値観」に関する教育というのは、一方通行の授業だと「刷り込み」「押しつけ」になってしまいかねません。そこで、今後ますます教育者に求められるのは、「ファシリテーション能力」、つまり、子どもたちが話し合いを通じて相互理解・合意形成できるように導くスキルだとわたしは考えています。
わたしがインターンをしているグローバル教育センターでは、学校教師向けのファシリテーション研修の中で①まずは教師自身のスタンスを述べずに、子どもたちに問題の背景を説明する、②子どもたちに互いの意見を尊重し合いながら議論させる、③考えうる全ての視点が出そろったあとで、教師自身の考えとその理由も話してよい、ということを伝えています。たとえ教師であっても、完全に「中立」である必要はなく、むしろ「あらゆる視点を考慮したうえで自分の意見を形成する」手本となることを重要視しているのです。
子どもたちが互いの意見を尊重し合いながら議論するプロセスを通じて、自分自身の価値観が「絶対」ではないということや、善悪のボーダーラインを引くことの難しさ、異なる意見を持つ他者との折り合いの付け方について学べる場づくりが、今後ますます教育現場において必要になってくるでしょう。
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