修士課程(MA)が始まってまだ4ヶ月弱しか経っていませんが、
そろそろ修士論文について考える時期です。
イギリスのMAは1年間と短いので、立ち止まっているヒマはないのです・・・
(そのため、イギリスへ大学院留学を考えている人は、修士論文で書きたいテーマについて渡英までにある程度考えておく必要があると思います!)
■指導教官について
指導教官(supervisor)はMAが始まってすぐの段階でランダムに充てられていて、秋学期中も月に一度のペースでミーティングがありました。その時は、修士論文についてというよりも、普段の授業について疑問や不安がないかどうか確認をする場、という感じでした。1人の教官に対して4人の学生が付いていて、全員集まってミーティングをしていました。
左が、わたしの指導教官であるクリス(Chris Kyriacou – Education, The University of York)。
その後変更がない場合にはその教官のもとで修士論文を書くことになります。
自分の書きたいテーマに近い分野で研究されている教授に付くのかと思いきや、そういうわけでもなさそうです。わたしの専攻コースは「市民教育(シティズンシップ教育)」ですが、指導教官のクリスは心理学で学士(BA)を取り、ロンドンの学校で数学の教師をされたあと、教師のストレス(つまり教育の心理的側面)をテーマにケンブリッジ大学で博士(PhD)を取った方。市民教育の専門ではありません。
ただ、わたしの場合、幸運なことに自分が書きたいテーマがクリスの関心分野にとても近いことがわかり、プロポーザル(企画書)のドラフトを見せたところ「いいね!面白くなりそうだね!」と喜んでいました。わたしとしても、やりやすい!
■わたしの修士論文のテーマ
さて、肝心の論文テーマについて。
わたしは渡英前から関心分野が明確で、『コミュニティ活動が日本の大学生の市民意識に与える影響』について研究したいと考えています。具体的には、
・自己効力感(Self-efficacy)や自尊感情(Self-esteem)など自分自身の捉え方
・共感(Empathy)や市民としての責任意識
・ボランティアや寄付など慈善的行動への態度
・選挙での投票や政府への働きかけなど政治的行動への態度
などを考えています。特に、慈善的行動と政治的行動との間にはギャップがある(たとえば社会問題に関心があり、ボランティアに対しては積極的だが政治に対しては消極的)と感じているので、そこにも注目したいと。
【追記】イギリスのシティズンシップ教育でも柱の一つとされているCommunity involvement(コミュニティ参加)には、大きく分けると3つの実践方法があります。
①Volunteerism(ボランティアリズム):いわゆる「ボランティア」。自発的な活動。
②Community service(コミュニティ・サービス):自発的な活動とは限らない。
③Service-learning(サービスラーニング):学校の講義+コミュニティ活動+振り返りがセット。
私の研究では、まだ日本では実践例の少ない③サービス・ラーニングに焦点を当てることにしました。
わたしはこれまで、赤十字やYMCAなどの青少年教育プログラムに携わる中で、
・学生時代:ボランティアに意欲的に取り組んだとしても、一過性の「体験・思い出」で終わり就職活動の時期が来る
↓
・就職活動:自分自身の価値や社会との繋がりについて考えるよりも、企業からの内定を勝ち取ることが目的になる(ボランティア経験は、履歴書やESを「飾る」一要素でしかない)
↓
・卒業後:「会社で働いて稼ぐ=社会人」という捉え方が一般的で、「一個人としてどう社会に参加するか?」という姿が見えず、道に迷う(学生時代のボランティアが、長期的なコミットメントに繋がらない)
というスパイラルに陥る10~20代の若者を多く見てきたので(いやわたしもまだ若いけれども)、日本における学生コミュニティ活動の課題と可能性をシティズンシップの観点から研究することで、日本の市民教育(特に若年層の社会参加)の発展に少しでも寄与できるような論文を執筆したいと考えています。
■研究・執筆のスケジュール
3月中旬(春学期の10週目):プロポーザル(Dissertation proposal)のアウトライン提出
※わたしは1月下旬の時点ですでに出しています。前倒しで進めたい!
4月中旬(夏学期の2週目):最終版のプロポーザル、倫理監査フォーム(Ethics audit form:研究が倫理的に問題がないことを説明するもの)提出
※これが受諾されるまでは、リサーチデータを集めてはいけないことになっています。
4月中旬~5月中旬(夏学期の2~5週目):修士論文に関するプレゼンテーション(10分間)
※研究を進めるためには、これをPassする必要があります(細かい点数は付かないよう)。
5月:データ収集(文献研究、質問票によるアンケート、インタビューなど)
– 質問票ドラフト作成(上旬)
– パイロット(テスト)調査(中旬)
– 質問票の配布(本番)(下旬)→事後インタビューは6月にかかりそう
6月:データ分析
7月:ドラフトを指導教官に提出→フィードバックをもらう
8月:論文完成・印刷・製本
9月頭:論文提出
・・・と、このようなスケジュールで進める予定です。
■1~2月(春学期前半)の間にしておくこと
わたしの場合は、すでにプロポーザルのアウトラインが出来ているので、今はひたすら文献を探す時期です。
というのも、「修士論文では完全オリジナルな内容は求められていない(というかそれは難しい)」ので、先行研究に自分自身の仮説や問い(Research questions)を加える形で執筆するのが通常のスタイルなので、いかに自分の研究にとって意義のある文献を探し、批判的に読み解くか、がカギとなるわけです。
あとは、2週間に一度のペースである指導教官とのミーティングや、博士課程の学生の協力を得ながら、2月中には骨組みやリサーチ対象を固めたいと思います。
論文提出まであと7ヶ月。ベストを尽くします!