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【イギリス留学】シティズンシップ教育の優等修士号を取得しました!

 
ご報告です^^
 
2015年11月13日付で、英国・ヨーク大学からシティズンシップ教育の優等修士号(Master of Arts degree in Global and International Citizenship Education with distinction)を取得しました!大学から来た手紙がこちら↓。1枚ペラの通知だけど、わたしにとっては重みのあるものです。
 
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成績は、渡英したときからの目標通り、コースワーク(スコア:70)、修士論文(スコア:72)、そして総合評価(スコア:71)すべてでDistinction(70点以上=一番上の成績ランク)の評価を得ることができ、本当にホッとしています。。
 
Results_all
 
8月末に提出した修士論文(概要はこちら)のフィードバックは、10月中旬にEメールで受け取ったのですが、

We would like your permission to use your dissertation to show to future students as an example of an outstanding dissertation. We can anonymise your work if you prefer. Please let me know if you would be happy for us to use your dissertation in this way.

「優れた論文の事例として、あなたの論文を将来の学生に公開しても良いですか」
と書いてあるのを読んだときは、文字通り飛び上がって喜びました!笑
 
とは言え、少し厳しいコメントもあるのですが。採点官からは下記のフィードバックをいただきました:
 
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<1. リサーチ・トピックに関する既存の文献について、本人のプロジェクトに関連づけながら理解を示しているか>
 
リテラチャー・レビュー(先行事例分析)がとてもしっかりしていて、良く書けています。私(注:採点官)はこの論文を書く前はサービスラーニングについてほとんど知りませんでしたが、筆者(注:わたしのこと)はとても明確に、過去文献を網羅していると感じました。
 
<2. 明確かつ意義のあるリサーチ・クエスチョンを述べ、本人の研究領域における重要性について説明できているか>
 
リサーチ・クエスチョンが明確に示されており、その重要性についても良く説明されています。
 
<3. 立てられたリサーチ・クエスチョンに対応するためのリサーチが計画かつ遂行されているか>
 
この研究は、良くデザインされ、立てられたリサーチ・クエスチョンにも良く対応できています。しかし、その分析については十分ではなかったかもしれません。
 
<4. 集めたデータの分析、およびそこから得られた成果について、リサーチ・クエスチョンに適切に答えられているか/また研究について結論が導き出されているか>
 
分析については、あまりよく説明されていないと感じました。平均スコア(注:調査票によるリサーチで得たもの)の編集が、サービスラーニングの影響に対する参加者の感じ方について、どのように情報を提示しているのか、明確ではありませんでした。記述的分析はあったものの、統計的分析が見られませんでした。それに加えて、質的データ(注:インタビューによるリサーチで得たもの)がそのように分析されたのか/5名の参加者がどのように選ばれたのか/リサーチ対象として選ばれた大学がどのように日本の国家的特徴を反映しているのか、が定かではないように感じました。
 
<5. 論文が既定のフォーマットとリファレンス要件に従って、良く議論され、良く書かれ、構成されているか>
とても明確かつ有能に議論・執筆されています。読みやすく、面白い内容でした。
 
<その他のコメント>
私は、大変楽しくこの論文を読みましたし、サービスラーニングについて多くのことを学びました。導かれた結論は合理的なものでした。
 
<改善のためのターゲット>
・量的・質的データのより強い分析
・量的データと質的データのさらに明確な関連づけ
・リサーチ参加者を選択する際のより良い根拠
 
自分でも課題と感じていたところですが、やはりデータ分析が甘かったようです^^;
論文の構成としては高い評価をいただけたのは良かったかな、と思います。
 
☆論文関係のブログ記事は「修士論文」のタグでまとめてあります。これから書く方の参考になりますように!
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まだ帰国から2ヶ月ほどしか経っていないのですが、めまぐるしい生活を送っていたので、論文を提出したのが遠い過去のよう・・・。でも今回、こうして修士号取得の連絡が大学から来て、喜びも苦しみもたくさん詰まった1年間のイギリス生活を思い出し、何とか良い結果を出せて良かった!と肩の荷が下りた思いです。
 
来年1月にある卒業式(学位授与式)は、渡航費を捻出するのが難しいだろうな・・・でも行きたいなぁ・・・と頭を悩ませている今日この頃です(;_;)
 

修士論文を提出しました!概要だけ載せておきます。

 
ついに!!!!!
 
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修士論文を提出してきました!!!!!
 
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一回目のデータ収集がうまく行かなかった時はヒヤヒヤしましたが・・・
何とか、提出期限(9月3日)よりも少し早めに提出することができました。
(わたしは何かと、最後の最後でヘマをやらかしがちなので、印刷後に万が一何かミスが見つかっても直せるように・・・と前倒しで終わらせました汗)
 
わたしの修士論文のテーマは、
“The Perceived Influence of Service-Learning on The Citizenship-Related Attitudes of Japanese Undergraduate Students”
 
意訳すると、「サービスラーニングがシティズンシップ関連の態度に対して与える影響について、日本の大学生がどう認識しているか」というものです^^
 
☆サービスラーニングとは、簡単に言ってしまうと「学校での授業(知識)」+「社会奉仕活動(経験)」+「リフレクション(振り返り)」がセットになった教育プログラム。日本では1990年代後半から徐々に導入する大学が増えてきましたが、まだ発展途上。
【参考記事】日本の大学教育改革と「サービスラーニング」導入状況
 
論文の頭(イントロダクションの前)に書いた、300語程度の概要(Abstarct)を英・日両方で載せておきます。実際の論文は13,000語ぐらいありますが「あ~、こういうこと論文に書いてたのね~」と何となく伝われば・・・!
 
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The main aim of this study is to explore the perceptions of Japanese undergraduate students regarding the influence of a university’s service-learning programme on their citizenship-related attitudes, such as their personal development, their personal interest and responsibility, and their behavioural willingness to participate in philanthropic and political activities.

 
(この研究の目的は、大学のサービスラーニング・プログラムがシティズンシップ関連の態度、たとえば自己成長や興味関心、責任感、慈善的または政治的行動への意欲などに与える影響について、日本の大学生の認識を調査することである。)
 

This dissertation explores the two main traditions of education for democratic active citizenship, English citizenship education and American service-learning, and presents a common critique for both approaches about the lack of political literacy aspects.

 
(この論文は、民主主義的アクティブ・シティズンシップのための教育における2つの主な様式である、イングランドのシティズンシップ教育とアメリカのサービスラーニングについてまず探り、次いで政治的リテラシーという観点の欠如という、両アプローチに対する共通の批判について示す。)
 

There has been a recent increase in attention to educational approaches regarding social participation in Japan and some universities have introduced service-learning programmes. Whilst some previous studies in the US have reported that service-learning can have a positive influence on the participants’ personal development, there are only a few studies regarding its influence on their philanthropic and political participation.

 
(日本では近年、社会参加を促す教育的アプローチに対する注目が高まっており、いくつかの大学ではサービスラーニングを導入している。過去のアメリカでの研究では、サービスラーニングは参加者の自己成長に対してポジティブな影響を与える、ということが報告されてきたが、彼らの慈善的または政治的参加への影響についての研究は、数が多くない。)
 

The main research question in this study is: How do Japanese undergraduates perceive the influence of service-learning on their attitudes after participating in the programme? The study focuses on a Japanese private university and the perception of undergraduate students who experienced service-learning in the last two years. Thirty-three students completed a questionnaire and five of these students were subsequently interviewed.

 
(この研究のリサーチ・クエスチョンは、「日本の大学生たちは、サービスラーニングが彼らの態度に与えた影響について、プログラム参加終了後にどのように認識しているか?」。ここでは日本のとある私立大学で、過去2年間にサービスラーニングを経験した学部生の認識に焦点を当てる。33名の学生が質問票に、うち5名がその後のインタビューに回答した。)
 

The findings indicate a low perceived influence of service-learning on the participants’ confidence in making a difference in society. Many students do, however, express a willingness to help others in difficulty, but their willingness to engage in political action is low.

 
(得られた結果が示すのは、参加者の認識として、「社会に変化を起こすことができる」という自信に対してサービスラーニング経験が与えた影響が小さかったということである。また、多くの参加者が「今後、困っている人を助ける」ことについての意欲を示したのに対して、「政治的行動に参加する(日本語補足:選挙での投票、政治的リーダーへの意思表明、デモへの参加など)」意欲は低かった。)
 

This dissertation argues that service-learning programmes can be successful in raising participants’ awareness of their interest in community issues to some extent, but it might not be enough to empower them to take action based on social justice activism. This dissertation suggests that well-structured reflection to understand the root causes of community issues and constructive dialogue and deliberation on controversial issues are required.

 
(この論文が主張するのは、サービスラーニング・プログラムは、地域が抱える課題に対する参加者たちの関心はある程度高めることに寄与できるが、彼らが社会正義の理念をベースに行動を起こすよう力づけるには不十分かもしれない、ということである。したがってこの論文は、地域の課題の根本的な原因について理解するための良く構成されたリフレクションと、物議をかもすような問題について建設的に対話・討議する場の必要性を提案する。)
 
**********
 
こんな感じです(かなりざっくりですが)。
 
自分のリサーチはあくまでもケーススタディで、論文に占める比重は、過去の文献研究(Literature Review)が大きいです。これまで行われてきた研究の中にあるギャップを自分なりに分析し、それを埋めるためのリサーチ・クエスチョンを立てて→結果をもとに議論を展開する、という流れです。
 
帰国後、報告会なり何かしら還元できる場があれば・・・と思いつつ、そこまで手が回るかちょっと不明なので、便乗できそうな機会があればお声掛けください(笑)。
 
ちなみに、現時点では修士論文を「提出した」というだけで、フィードバックがもらえるのは帰国後の10月、修士号取得の最終審査結果が出るのは11月の予定です。
 
☆そのほか、修士論文に関する過去の記事は「#修士論文」のタグでまとめてあるので、ご興味のある方はそちらからどうぞ~。
 

日本の大学教育改革と「サービスラーニング」導入状況

 
いま執筆中の修士論文でわたしがテーマに据えている「サービスラーニング」
日本でも、カリキュラムに導入する大学が少しずつ増えてきているようですが、全体像が把握しづらい(導入している大学数とか・・・)ので、自分用のまとめとして、文部科学省によるGP事業を中心に実践例をリストアップすることにしました。
 
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Photo from tiffanyhuang.com
 
■サービスラーニングとは?

教育活動の一環として、一定の期間、地域のニーズ等を踏まえた社会奉仕活動を体験することによって、それまで知識として学んできたことを実際のサービス体験に活かし、また実際のサービス体験から自分の学問的取組や進路について新たな視野を得る教育プログラム。
 
サービスラーニングの導入は、①専門教育を通して獲得した専門的な知識・技能の現実社会で実際に活用できる知識・技能への変化、②将来の職業について考える機会の付与、③自らの社会的役割を意識することによる、市民として必要な資質・能力の向上、などの効果が期待できる。

中央教育審議会答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」用語集p.38) 
 
一般的な例でいうと、
大学での講義(前期)+地域でのボランティア活動(夏季休暇)+振り返り(後期)
というような形で、カリキュラムの一環としてボランティア活動が行われ、単位も付与されるという教育プログラム。
 
1950~60年代のアメリカの市民権運動、学生運動にルーツを持ち、1990年代の「国家及びコミュニティ・サービス法(National and Community Service Act)」制定や「キャンパス・コンパクト(Campus Compact)」という連合体設立以降、アメリカの多くの大学でサービスラーニングが導入されるようになりました。
 
なお日本では、1999年に国際基督教大学(ICU)で初めて導入されました。
 
■政府による「サービスラーニング」の支援
日本では、政府主導でサービスラーニングを導入してきたというよりは、すでに大学独自のカリキュラムとして実践されている取り組みに対して、政府が大学教育改革の一環として注目、支援してきたという流れのようです。
以下、関連する答申や事業について、時系列でメモしておきます。
 
◎中央教育審議会答申(平成14年7月29日)
「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について」

今日,いじめ,暴力行為,ひきこもり,凶悪犯罪の増加など青少年をめぐり様々な問題が発生し,深刻な社会的問題となっている。こうした問題の背景には,様々な要因が考えられるが,思いやりの心や社会性など豊かな人間性が青少年にはぐくまれていない現実とともに,他者を省みない自己中心的な大人の意識や生き方,さらには様々な社会的課題に対し行政だけでは適切に対処できないという状況等が深くかかわっている。
 (中略)
 中央教育審議会では,こうした認識に立って,諮問事項について検討し,「奉仕活動・体験活動」が,我々が直面する問題を解く糸口となると考えた。「奉仕活動・体験活動」は,人,社会,自然とかかわる直接的な体験を通じて,青少年の望ましい人格形成に寄与する。

 
この答申の中で、「18歳以降の個人が行う奉仕活動等の奨励・支援」の例としてサービスラーニングが挙げられています。
 

大学,短期大学,高等専門学校,専門学校などにおいては,学生が行うボランティア活動等を積極的に奨励するため,正規の教育活動として,ボランティア講座やサービスラーニング科目,NPOに関する専門科目等の開設やインターンシップを含め学生の自主的なボランティア活動等の単位認定等を積極的に進めることが適当である。

 
ただし、「単位は与えないが,サービスラーニング・プログラムの一環として位置付けられるもの」として
 
(1)大学が公的に行う諸外国におけるワークキャンプ
(2)学生のクラブ活動として行っているユネスコクラブのスタディーツアー,ワークキャンプ,点訳サークルの活動 等
 
が参考事例として挙げられており、ボランティア活動との明確な違いは認識されていない印象を受けます。
 
◎文部科学省GP事業

文部科学省では、国公私立大学を通じて、教育の質向上に向けた大学教育改革の取組を選定し、財政的なサポートや幅広い情報提供を行い、各大学などでの教育改革の取組を促進するため、「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」、「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」及び「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」を実施しています。
 平成21年度からは「大学教育・学生支援事業」のテーマA「大学教育推進プログラム」において大学教育改革の取組を推進しています。

(リンク:http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kaikaku/gp.htm
 
※ただし、「平成22年11月に実施された行政刷新会議の事業仕分けにより、当時実施されていた「大学教育・学生支援推進事業」が「大学の本来業務であり、このような補助を行うことは認められない」として、「国の事業として廃止」との評価を受けた」(「国公私立大学を通じた大学教育改革の支援に関する調査検討会議」平成25年8月30日まとめpp.1-2より)
 
GP事業とは、大学教育改革の一環で、各大学(短期大学、高等専門学校含む。以下同じ)が自ら大学教育に工夫を凝らした「優れた取組(Good Practice=GP)」で他の大学でも参考となるようなものを公募により選定する文部科学省の事業です(詳しくはこちら)。
 
以下、GPとして過去に選定された取組のうち、サービスラーニングだけを拾ってみました(漏れがあればぜひ教えてください)。
 
(1)特色ある大学教育支援プログラム(特色GP):平成15~19年度
 ・女子美術大学「美大におけるサービス・ラーニングの実践」(平成16年度)
 
(2)現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP):平成16年~19年度
・立命館大学「地域活性化ボランティア教育の深化と発展」(平成17年度)
 
・関西国際大学「大学、住民及び行政等の協働と地域活性化-シニア学生受入モデルとサービスラーニングモデルの開発-」(平成18年度)
 
・新見国立短期大学「地域のニーズに応える看護専門職養成-在宅高齢者支援プログラムとサービス・ラーニング-」(平成18年度)
 
(3)質の高い大学教育推進プログラム(教育GP):平成20年度
・日本福祉大学「協働型サービスラーニングと学びの拠点形成-NPOとの連携による地域貢献学習を導入した自己発見と学びの展開-」(平成20年度)
 
・関西国際大学「初年次サービスラーニングの取組-学士課程における複合的・重層的サービスラーニングの展開-」(平成20年度)
 
(4) 大学教育・学生支援推進事業(大学教育推進プログラム):平成21~22年度
・山梨県立大学「課題対応型SLによる公立大学新教育モデル」(平成22年度)
 
◎GP以外の大学教育改革事業
(1)大学教育の国際化推進プログラム
・国際基督教大学「国際サービス・ラーニングの展開と連携構築 -実践型国際教養教育のアジア・アフリカネットワーク形成」(平成17年度)
 
(2)新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム
・上智短期大学「サービスラーニングによる学生支援の総合化-ライフデザインと社会人基礎力の養成-」(平成20年度)
 
上記以外でも、サービスラーニングを導入している大学はあります。たとえば、
・筑波大学人間学群「サービス・ラーニング」 
・日本とインドネシアの6大学(愛媛大学、香川大学、高知大学、ガジャマダ大学、ボゴール農業大学、ハサヌディン大学)が協働して実施するプログラム「SUIJIーSLP」など。
 
ただ、サービスラーニングに関する全国的な調査が今のところないため(ボランティアに関する調査は複数存在します)、主な事例を把握するために文部科学省による選定取組をリストアップしました。
 
◎中央教育審議会答申(平成24年8月28日)
「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ~」
 

我が国においては、急速に進展するグローバル化、少子高齢化による人口構造の変化、エネルギーや資源、食料等の供給問題、地域間の格差の広がりなどの問題が急速に浮上している中で、社会の仕組みが大きく変容し、これまでの価値観が根本的に見直されつつある。このような状況は、今後長期にわたり持続するものと考えられる。このような時代に生き、社会に貢献していくには、想定外の事態に遭遇したときに、そこに存在する問題を発見し、それを解決するための道筋を見定める能力が求められる。

とあり、そのための能動的学修(アクティブ・ラーニング)の例として「インターンシップやサービス・ラーニング、留学体験といった教室外学修プログラム等の提供が必要」という記述が見られます(p.10)。
また、「地域社会・企業等」と大学との連携という文脈でも、「サービス・ラーニング、インターンシップ、社会体験活動や留学経験等は、学生の学修への動機付けを強め、成熟社会における社会的自立や職業生活に必要な能力の育成に大きな効果を持つ」と触れられています(が、どちらかと言えばインターンシップの重要性が強調されています)。

◎今後のサービスラーニングの発展

同じ「サービスラーニング」という名前であっても、大学によりそのカリキュラム内容には差異があり、また「サービスラーニング」と掲げていなくても類似するプログラムを実践しているところはあると思います。
 
そのため、日本におけるサービスラーニングの実態を把握するのがなかなか難しいのですが(だからこそ、修士論文のテーマとして選んだのですが)、オンラインでいくつか日本の先生による論文を読むことができたので、リンクを貼らせていただきます(もし、何か問題があればご指摘ください)。
 
・桜井政成「「地域活性化ボランティア教育の深化と発展」:サービス・ラーニングの全学的展開を目指して」(立命館高等教育研究第7号pp.21-49、2007年)
 
・武田直樹「日本の大学教育におけるサービスラーニングコーディネーターの現状と課題」(つくば学院大学紀要第6集pp.119-131、2011年)
 
英米の学者による論文を読むと、「サービスラーニングは、単に“良いこと”をするボランティアではなく、社会変革を促すような政治的側面も視野に入れて発展するべきだ」という主張も見られますが、まだ日本では「ボランティアの延長」または「労働市場のニーズに合った人材を育成するためのキャリア学習」という側面が強いように感じます(その辺りを学生対象にリサーチし、分析するのがわたしの修士論文のメインテーマです)。
 
とは言え、日本におけるサービスラーニングの歴史はまだ15年ほどで、実践例も多くないのが現状。今後社会の変化と共にどのように発展していくのか、注目していきたいと思います。
 

【イギリス留学】12,000語の修士論文をどう組み立てるか?

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Photo from The KEEP-O-CALM MATIC
(このマウスパッド買おうかな?と思ったら£9.95もする!笑)
 
さて、Summer Term(夏学期)の英語の授業は全5回で、修士論文の構成の作り方を学びました。秋学期・春学期に比べると実用的な内容で、タメになって良かった^^
 
というわけで、学んだ内容を忘れないようにブログで整理・・・。
 
■章立てとボリューム配分
 
わたしの学部 (Education)は、修士論文の語数は12,000 words(±10%)と決められており、この範囲を超えても下回っても点数を失うことになります。ボリュームとしては、学部論文と比べてもさほど多いわけではありません。限られた分量の中で、いかにクリアに主張を展開するか、ということが勝負となります。
 
大体の目安として、次のような構成です。各章の内容についてはのちほど!
 
・Abstract Topic, methods & results :2% (300 words)
・Chapter 1 Introduction:8% (1,000 words)
・Chapter 2 Context/literature review:23% (2,700 words)
・Chapter 3 Methodology:13% (1,500 words)
・Chapter 4 Results and analysis:25% (3,000 words)
・Chapter 5 Discussion:21% (2,500 words)
・Chapter 6 Conclusion :8% (1,000 words)
 
Abstract
 
Abstract(概要)は、修士論文全体の内容をコンパクトにまとめたもの。つまり、読者(主に採点する教授陣)が論文を読む前に大体の内容をつかめるものにしなければなりません。ここに含まれるものは、主に下記の項目。
 
・研究の目的と狙い
・メソッド(リサーチ及びその結果分析に用いる手段)
・研究のサマリー(要約)と主な成果
・研究結果の重要なポイント
 
1. Introduction
 
Introduction(イントロダクション:導入)には、次の内容が含まれます。
 
・研究分野、領域
・リサーチ・クエスチョン(研究において立てる問い)とその根拠、価値
・リサーチ・研究メソッドについての簡潔な説明
・論文全体の見通し、各章の簡単な内容説明
 
最初のAbstract(概要)も、論文全体の内容について大まかに示すという意味では同じですが、イントロダクションの章ではさらに、
 
・研究のバックグラウンド
・研究の正当性(なぜやる意味があるのか)
・論文全体の構成とアプローチ
 
を明らかにする必要があります。
 
イントロダクションは、他の章の内容が固まらないと書けないので、わたしが普段のエッセイ(レポート)を書く時には下書きだけしておいて、一番最後に書き直すようにしています。
 
2. Context/literature review
 
Literature Review(リテラチャー・レビュー:先行研究分析)に求められることは、主に2つ。
 
(1) 自分の研究分野の重要性を明らかにする
(2) 自分の研究が埋められるニッチな領域を示す
 
それぞれについて見ていきます。
 
(1)自分の研究分野の重要性を明らかにする
主な展開の仕方は2つ。
 
・社会でのニーズなどを鑑みて、その分野の重要性を強調する。
・学術界において、ハイレベルな研究がされてきた(つまり関心が高い)分野であることを強調する。
 
(2)自分の研究が埋められるニッチな領域を示す
(1)で重要な分野であることが示せても、すでに手垢がたくさん付いていることを研究しても学術的な意味がないので、「なぜ自分がそれを研究する必要があるのか?」を示さなければなりません。
そのために重要なのが、リテラチャー・レビュー。自分の研究分野に関連する先行研究文献を分析し、次のような手段で自分の研究の重要性を示します。
 
・先行研究における主張に対して、異論(Counter-claim)を唱える。
・先行研究の中にあるギャップ(不足している部分など)を示す。
・先行研究の内容に対して、疑問を投げかける。
 
たとえば、
・この分野においてAとBの観点では良く研究されているが、Cの観点はあまり強調されてこなかった。
・Dというテーマに対して、欧米のケーススタディは多いが日本については研究例が少ない。
といった具合です。
 
(1)と(2)をまとめると、先行研究を良く分析したうえで、その分野の重要性と、まだあまり研究されていない部分について示し、だからこそ自分がそれを研究する意味があるのだ、という主張を展開することが大切だということです。
 
最初に載せた各章のボリュームを見ると、Introduction & Literature Reviewが占める割合(合わせて31%)は、Results and analysis(自分のリサーチ結果と分析:25%)よりも大きく、とても重要な章だということがわかります。そのため、修士論文を書くにあたってはとにかく先行研究文献をたくさん読むことが必要になります。
 
3. Methodology
 
Methodology(研究手法)について書く章です。
 
・リサーチ・クエスチョンに対するアプローチ方法
・リサーチ対象者(もしいる場合)
・データを回収するメソッド(調査票、インタビュー等)と手順
・そのメソッドを選ぶ論理的根拠(Rationale)←重要!!
・メソッドを使ううえでの倫理的な配慮←これも重要!!
・データ回収・分析をするうえで、バイアスを回避し正確を期するための説明
 
英語のクラスを担当していたチューターは、これまで多くの修士論文の精査をしてきた経験から、「このメソッドを使います、という記述だけで、なぜそのメソッドが一番適しているのかという記述を欠いている学生が多いから、そこは注意してね」と言っていました。つまり、「何となく調査票配りま~す」というだけでは不十分で、「なぜ観察でもインタビューでもなく、調査票でデータを取るのか?」という根拠を示す必要があるということです。
 
4. Results and analysis
 
自分のリサーチのResults(結果)とAnalysis(分析)について書きます。
ここで重要なポイントは、
 
・Methodologyの章 (Chapter 3)の流れに沿って書く
(もし2つ以上のメソッドを使う場合は、それぞれの結果について分けて記述)
・リサーチ・クエスチョンに答える形で書く←重要!!
 
ということ。どんなにたくさんのデータが得られたとしても、自分が最初に立てたリサーチ・クエスチョンに沿って結果を示すという軸をブレさせないことが重要です。
 
また、このあとのDiscussion(ディスカッション)の章に繋げるため、リサーチの結果得られたデータをただ羅列するのではなく、特に興味深い観点にフォーカスすることも求められます。たとえば、
 
・データの中に見られる傾向やパターン(例:性別による特徴など)
・多くの人が選んだ項目、もしくはほとんど選ばれなかった項目
・データの統計的信頼度(データ分析でSPSSなどの解析ソフトを使う場合)
・その他、意外な結果など
 
当然のことながら、自分の仮説とは異なる結果が出たとしても、データを偽ることなく示さなければなりません。また、表やグラフを効果的に用いることも求められます。
 
5. Discussion
 
Discussion(ディスカッション)の章では、前章で示したリサーチ結果に基づいて、主に次の3つの観点から議論を展開します。
 
(1) 自分自身の研究について
・研究結果が、自分のリサーチ・クエスチョンに対してどの程度答えを提示したのか(もしくは答えが出なかった場合、その理由)←やっぱり重要!!
・得られたデータ同士の関連性や一貫性
・リサーチ・メソッドの評価
 
(2) 類似する他の研究も含めた広いコンテクスト
・先行研究結果との関連性
・先行研究と比較したときの類似点や相違点(ただし、サンプル数の違いなども考慮)
 
(3) 自分の研究領域における理論・実践との紐づけ
・自分の研究結果が、理論上持つインパクトや意味
・得られた研究結果をどのように一般化するか(もしくは限界があるか)
・自分の研究から導き出される教訓や今後求められるアクションの提示
 
前章同様、本文の内容と沿う形で効果的にグラフや表を挿入していきます。
 
6. Conclusion
 
そしてついにConclusion(結論)の章!主に次の質問に対する答えを述べていきます。
 
・どのように・どの程度自分の研究目的を達成することができたか?(ギャップや課題は?)
・自分の研究が意味するところとは?
・自分の研究の限界(リサーチしきれない部分)は?
・さらに研究が求められるところとは?(今後研究が必要な部分)
 
また、「結論」は単なる「まとめ」ではないため、リサーチ・メソッド、アプローチ、研究結果などについて自ら批判的に考察・評価することも必要です。
 
・・・と、ざっとまとめると修士論文の構成はこのようになります!
これを一つの目安として、わたしもこれから約3ヶ月、論文執筆を頑張ります^^
 
☆修士論文関連記事は、こちらのタグからまとめて読むことができます!
 

【修士論文】7つのリサーチ・ステップと便利なWebサービス

 
3月も中盤に差し掛かり、イギリスの暗くて寒い冬も終わろうとしています(・・・と信じたい)。
キャンパス内で感じられる春の訪れ。早く暖かくならないかな~!
 
spring_campus
さて、先日、教育学部のライブラリアン(司書さん)が、修士論文執筆に必要なリサーチプロセスについてセミナーでプレゼンしてくれました。今後、リサーチを進めるにあたって役立つ情報がいくつかあったので、忘れないうちに箇条書きでまとめておきます。
 
1. Identify
・自分が調べたいトピックについて、問いを立てる(=リサーチ・クエスチョン)。
・どんな情報を集める必要があるか、整理する。
 
2. Contextualise
・自分のリサーチのコンテクスト(文脈)を把握する。
→トピック全体の大きな絵を思い浮かべ、自分のリサーチがどのその中でどこに位置するのか?
・リサーチの目的/文脈/情報源/限界について整理する。
 
3. Plan
・どんな方法で情報を検索するのか、何のリソースが入手可能なのかを把握する。
・しっかりとした情報収集のプランを立てておくことは、長い目で見れば時間の節約につながる。
・自分のリサーチ・クエスチョンを、いくつかの小さい質問に分解する。
・各質問の重要な単語(key terms)の類義語や別の表現で言い換えた言葉のリストを作る。
(わたしの例:community involvement / service learning / volunteeringなど)
 
4. Explore
・偏りなく様々なデータベース、検索エンジンから情報を収集する。
①大学図書館のデータベース(Library catalogues)
 
②学際的なリソース(Multidisciplinary resources)
- Scopus(スコーパス):世界最大級の抄録・引用文献データベース
- Web of Science:自然科学、社会科学、人文科学分野の論文データベース
- Google Scholar:細かい検索はできないが、キーワードだけで簡単に調べたい時には便利。
 
③主題別に特定したリソース(Subject specific resources)
- たとえば、教育学の分野であればERIC(Education Resources Information Center)の書誌データベース(bibliographic databases)など。
 
④専門家のリソース(Specialist resources)
- 統計資料、一次資料、新聞など。
 
⑤Web 2.0(参考文献としては使えないが、情報収集の手段として)
- 自分の研究分野に関連するブログ
- 関連団体のTwitter、Facebook
- Addict-o-matic(ソーシャル・メディアのリンクをキーワードで検索できるサイト)
 
5. Gather
・複数ワード検索などをうまく利用する。
・多くの書誌データベースでは(サインインすれば)自分の検索履歴が残せるので、それを活用する。
 
6. Evaluate
・自分が集めた資料はリサーチ・トピックに関連性があるか?
・引用の数が少なすぎたり多すぎたりしていないか?
・偏りなく、幅広いリソースから情報を集めたか?
 
7. Organise
・アプリを利用して、集めたリソースを記録しておく(どこから取った情報なのか明確にしておく)。
- EVERNOTE
- Google Drive
 
・引用文献管理ソフトウェア(Reference management software)を活用する(これすごく便利!!
- EndNote(←うちの大学のオススメ)
- Zotero
- MENDEREY
 
・・・ざっとこんな感じです。手当たり次第に文献を検索してあとで迷子にならないように、ウェブサービスを上手く活用していきたいと思います!
 

【修士論文】プロポーザル提出、執筆スケジュール

 
修士課程(MA)が始まってまだ4ヶ月弱しか経っていませんが、
そろそろ修士論文について考える時期です。
イギリスのMAは1年間と短いので、立ち止まっているヒマはないのです・・・
(そのため、イギリスへ大学院留学を考えている人は、修士論文で書きたいテーマについて渡英までにある程度考えておく必要があると思います!)
 
■指導教官について
 
指導教官(supervisor)はMAが始まってすぐの段階でランダムに充てられていて、秋学期中も月に一度のペースでミーティングがありました。その時は、修士論文についてというよりも、普段の授業について疑問や不安がないかどうか確認をする場、という感じでした。1人の教官に対して4人の学生が付いていて、全員集まってミーティングをしていました。
 
chris_and_mio
左が、わたしの指導教官であるクリス(Chris Kyriacou – Education, The University of York)。
 
その後変更がない場合にはその教官のもとで修士論文を書くことになります。
自分の書きたいテーマに近い分野で研究されている教授に付くのかと思いきや、そういうわけでもなさそうです。わたしの専攻コースは「市民教育(シティズンシップ教育)」ですが、指導教官のクリスは心理学で学士(BA)を取り、ロンドンの学校で数学の教師をされたあと、教師のストレス(つまり教育の心理的側面)をテーマにケンブリッジ大学で博士(PhD)を取った方。市民教育の専門ではありません。
 
ただ、わたしの場合、幸運なことに自分が書きたいテーマがクリスの関心分野にとても近いことがわかり、プロポーザル(企画書)のドラフトを見せたところ「いいね!面白くなりそうだね!」と喜んでいました。わたしとしても、やりやすい!
 
■わたしの修士論文のテーマ
 
さて、肝心の論文テーマについて。
わたしは渡英前から関心分野が明確で、『コミュニティ活動が日本の大学生の市民意識に与える影響』について研究したいと考えています。具体的には、
 
・自己効力感(Self-efficacy)や自尊感情(Self-esteem)など自分自身の捉え方
・共感(Empathy)や市民としての責任意識
・ボランティアや寄付など慈善的行動への態度
・選挙での投票や政府への働きかけなど政治的行動への態度
 
などを考えています。特に、慈善的行動と政治的行動との間にはギャップがある(たとえば社会問題に関心があり、ボランティアに対しては積極的だが政治に対しては消極的)と感じているので、そこにも注目したいと。
 
【追記】イギリスのシティズンシップ教育でも柱の一つとされているCommunity involvement(コミュニティ参加)には、大きく分けると3つの実践方法があります。
 
①Volunteerism(ボランティアリズム):いわゆる「ボランティア」。自発的な活動。
②Community service(コミュニティ・サービス):自発的な活動とは限らない。
③Service-learning(サービスラーニング):学校の講義+コミュニティ活動+振り返りがセット。
 
私の研究では、まだ日本では実践例の少ない③サービス・ラーニングに焦点を当てることにしました。
 
わたしはこれまで、赤十字やYMCAなどの青少年教育プログラムに携わる中で、
 
・学生時代:ボランティアに意欲的に取り組んだとしても、一過性の「体験・思い出」で終わり就職活動の時期が来る

・就職活動:自分自身の価値や社会との繋がりについて考えるよりも、企業からの内定を勝ち取ることが目的になる(ボランティア経験は、履歴書やESを「飾る」一要素でしかない)

・卒業後:「会社で働いて稼ぐ=社会人」という捉え方が一般的で、「一個人としてどう社会に参加するか?」という姿が見えず、道に迷う(学生時代のボランティアが、長期的なコミットメントに繋がらない)
 
というスパイラルに陥る10~20代の若者を多く見てきたので(いやわたしもまだ若いけれども)、日本における学生コミュニティ活動の課題と可能性をシティズンシップの観点から研究することで、日本の市民教育(特に若年層の社会参加)の発展に少しでも寄与できるような論文を執筆したいと考えています。
 
■研究・執筆のスケジュール
 
3月中旬(春学期の10週目):プロポーザル(Dissertation proposal)のアウトライン提出
※わたしは1月下旬の時点ですでに出しています。前倒しで進めたい!
 
4月中旬(夏学期の2週目):最終版のプロポーザル、倫理監査フォーム(Ethics audit form:研究が倫理的に問題がないことを説明するもの)提出
※これが受諾されるまでは、リサーチデータを集めてはいけないことになっています。
 
4月中旬~5月中旬(夏学期の2~5週目):修士論文に関するプレゼンテーション(10分間)
※研究を進めるためには、これをPassする必要があります(細かい点数は付かないよう)。
 
5月:データ収集(文献研究、質問票によるアンケート、インタビューなど)
– 質問票ドラフト作成(上旬)
– パイロット(テスト)調査(中旬)
– 質問票の配布(本番)(下旬)→事後インタビューは6月にかかりそう
 
6月:データ分析
 
7月:ドラフトを指導教官に提出→フィードバックをもらう
 
8月:論文完成・印刷・製本
 
9月頭:論文提出
 
・・・と、このようなスケジュールで進める予定です。
 
■1~2月(春学期前半)の間にしておくこと
 
わたしの場合は、すでにプロポーザルのアウトラインが出来ているので、今はひたすら文献を探す時期です。
というのも、「修士論文では完全オリジナルな内容は求められていない(というかそれは難しい)」ので、先行研究に自分自身の仮説や問い(Research questions)を加える形で執筆するのが通常のスタイルなので、いかに自分の研究にとって意義のある文献を探し、批判的に読み解くか、がカギとなるわけです。
 
あとは、2週間に一度のペースである指導教官とのミーティングや、博士課程の学生の協力を得ながら、2月中には骨組みやリサーチ対象を固めたいと思います。
 
論文提出まであと7ヶ月。ベストを尽くします!