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理想論だと言われても教育者として追求したいこと

 
フランスの風刺週刊誌「シャルリ・エブド」本社の襲撃事件。
 
シリアで起きた、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」による日本人の人質殺害事件。
 
今わたしはイギリスにいて、日本・海外メディアの報道やネット上での様々な反応を毎日目にしていて、心がいつもザワザワしています。
 
どこまでが「表現の自由」なのかとか、
「自己責任」がどうとか、
いろいろ意見は飛び交っている中で、
物事の「本質」はどこにあるのだろう
とわたしなりに考えて、わからなくなって、でも思考停止に陥りたくないからまた考えて。
 
個別の事件について(そしてこれらの報道やゴシップの陰に隠れてしまっているけれど世界のあちこちで進行中の問題について)思うところはもちろんあるのですが、このブログでは、イギリスで市民教育(シティズンシップ教育)を研究する学生・教育者としての想いを書こうと思います。
 
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池上彰さんの日経新聞コラム(こちらの記事:「後藤さんの志を継ぐために」)に、こんなことが書いてありました。
 

こうした悲劇を防ぐには、どうすればいいのか。即効薬はありませんが、いまこそ求められるのは歴史観ではないのか。人間の愚かさと知恵の詰まった歴史を学ぶ中から、次の悲劇を防止する仕組みを構想する。

 
歴史を学ぶ目的は、試験のために年号や単語を暗記することじゃない。変えられない過去の教訓を現在に生かし、持続可能な未来に繋げることなのだと、わたしも考えています。
 
でも、それを子どもたちに教えられる大人は、教師は、どれだけいるだろう?
わたしは、いま世界で起きていることの「本質」をどのぐらい理解しているだろう?
 
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「もっと学びたい」と思ってイギリスの大学院に来たけれど、学べば学ぶほど、まだまだ自分がわかっていないこと、深く知らなければいけないことがたくさんあると気付かされます。
わたしの専門は教育だけど、歴史も、政治も、法律も、経済も、ぜんぶ繋がっていて、果てしない。社会というのは、そんなにシンプルにできていないから。
 
だからこそ、学生時代にバラバラの科目ー国語、歴史、公民、生物などーで学んできたものは、本来それぞれの繋がりを意識して学ぶことが必要なのではないか、と市民教育の研究を始めてから強く思います。
 
では、それらを繋ぐものは何かということになるのですが、
こちらの記事にも書いたとおり、わたしは教育プログラム全体のベースには、社会正義(Social justice)の促進、特に人権(Human rights)の尊重という共通意識があるべきだと考えています。
 
そのために国はどのような教育方針、カリキュラムを打ち出すべきなのか、
 
学校現場では何をどう教えていけるのか、
 
わたしのいるNGOセクターではどのようなアドボカシー(政策提言)、サポートをしていけるのか。
 
考えなければいけないことは山積みだし、1年イギリスで研究して修士号を取っただけで答えが出るなんて思っていません。
 
ただ、世界中で起きている負の連鎖を見るにつけ、
取り返しのつかないことが起こってから表面上の議論をするのではなく、
根本的に、教育の在り方から考え直すべきなんじゃないか
という想いは強くなるばかりです。
 
「教育」というのはすぐに成果が出るような特効薬ではないし、
そもそも何が正しくて何が間違っていると言える話ではないので、わたしの考えは理想論だと言う人もいるでしょう。
でも、少なくともわたしは、「自分自身と他者の人権をどう守っていくべきか」を考え、議論する機会がもっとあるべきだと強く信じています。大人も子どもも。
 
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”どうせ自分は非力な存在で、どうあがいたって社会なんて変えられないんだな”
 
と、20歳の時にセルビアで抱いたやさぐれた気持ち。
 
そのあと、学生ボランティアの活動をスタッフとしてサポートする立場になり、徐々に自分の中で膨らんでいった、
 
”一人ひとりが、自分自身の役割や尊厳に気付き、他者と多様性を認め合いながら参加できる社会を創っていくために、教育者としてどうエンパワーメントしていけるだろう?”
 
という疑問。
 
これが、わたしが留学を決めた原点です。
 
国際情勢が揺らいでいて、何を、誰を信じたらいいのかわからなくなることもあるけれど。
こんな時だからこそ、原点に立ち戻って、自分にできることを一つひとつ着実にやっていきたい。
今すぐに何かを変えることはできなくても、過去の教訓を未来に繋げるために、教育のフィールドでできることがきっとあるはずだと信じて。
 
とりとめもなく書いてしまったけれど、ここ最近こんなことをぐるぐると考えています。
 
[Photo via zsazsabellagio.blogspot]