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【メモ】逆説の10カ条「それでも人を愛しなさい」

 
1968年、当時ハーバード大学の2年生だったケント・M・キースという青年が、高校の生徒会のリーダーたちを激励するために書いたという「逆説の10カ条(The Paradoxical Commandments)」(でも、長年マザー・テレサの言葉として広まっていたそう)。
さまざまな所で引用されている言葉ですが、最近ふと思い出すことがあったので、メモとして。
 
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Photo from bryanhardwick.com
 
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1. 人は不合理で、わからず屋で、わがままな存在だ。それでもなお、人を愛しなさい。
(People are illogical, unreasonable, and self-centered. Love them anyway.)
 
2. 何か良いことをすれば、隠された利己的な動機があるはずだと人に責められるだろう。それでもなお、良いことをしなさい。
(If you do good, people will accuse you of selfish ulterior motives. Do good anyway.)
 
3. 成功すれば、うその友だちと本物の敵を得ることになる。それでもなお、成功しなさい。
(If you are successful, you will win false friends and true enemies. Succeed anyway.)
 
4. 今日の善行は明日になれば忘れられてしまうだろう。それでもなお、良いことをしなさい。
(The good you do today will be forgotten tomorrow. Do good anyway.)
 
5. 正直で率直なあり方はあなたを無防備にするだろう。それでもなお、正直で率直なあなたでいなさい。
(Honesty and frankness make you vulnerable. Be honest and frank anyway.)
 
6. 最大の考えをもった最も大きな男女は、最小の心をもった最も小さな男女によって撃ち落されるかもしれない。それでもなお、大きな考えをもちなさい。
(The biggest men and women with the biggest ideas can be shot down by the smallest men and women with the smallest minds. Think big anyway.)
 
7. 人は弱者をひいきにはするが、勝者の後にしかついていない。それでもなお、弱者のために戦いなさい。
(People favor underdogs but follow only top dogs. Fight for a few underdogs anyway.)
 
8. 何年もかけて築いたものが一夜にして崩れ去るかもしれない。それでもなお、築きあげなさい。
(What you spend years building may be destroyed overnight. Build anyway.)
 
9. 人が本当に助けを必要としていても、実際に助けの手を差し伸べると攻撃されるかもしれない。それでもなお、人を助けなさい。
(People really need help but may attack you if you do help them. Help people anyway.)
 
10. 世界のために最善を尽くしても、その見返りにひどい仕打ちを受けるかもしれない。それでもなお、世界のために最善を尽くしなさい。
(Give the world the best you have and you’ll get kicked in the teeth. Give the world the best you have anyway.)
 
原文:Anyway, The Paradoxical Commandments by Dr. Kent M. Keith
邦訳:Wikipedia
 
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この言葉を聞いて、若きリーダーたちは何を想ったのだろう?
わたしは、誰を、どんな言葉で、何に向かってエンパワーメントしていけるだろう?
 

【JID連載②】欧州の「インクルーシブ」教育とは~移民受け入れに備える日本が学べること(2015/5/3)

 
「”ニュースの深層”を徹底解説」するウェブメディア、Japan In-Depth(ジャパン・インデプス)にて連載記事を持たせていただいています。【齋藤実央のシティズンシップ論考】というタイトルで、ヨーロッパが抱える移民などの問題について、わたしが研究している市民権(シティズンシップ)の観点から考察していきます。
(ブログへの転載許可をいただいています^^)
 
☆これまでの連載記事
【第1回】欧州で移民排斥の極右政党台頭~テロと経済状況悪化が背景に~(2015/3/26)
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[齋藤実央]【欧州の「インクルーシブ」教育とは】~移民受け入れに備える日本が学べること
投稿日:2015/5/3
記事リンク:http://japan-indepth.jp/?p=17898
 
移民の増加により、民族的、文化的多様性が増している欧州では、「統合(Integration)」がますます大きな共通課題となっている。しかし、各国の教育政策に目を向けてみると、その実践方法は様々だ。親の出身国で生まれ育ったのち、移民として新しく第三国で暮らすことになった子どもたちは、学校の授業に付いていけず、疎外感を抱くケースも多い。その大きな要因の一つが、言語の壁だ。本記事では、フランスとイギリスの学校教育における言語的マイノリティの生徒へのアプローチを比較してみたい。
フランスでは、「市民(シティズンシップ)」の概念は必ずしも人種や出生時の国籍と同義ではなく、移民の親のもとに同国で生まれた子どもでも、18歳になった時点でほぼ自動的にフランスの市民として認められることになる。その代り、「フランス共和国の原則の尊重」が義務とされており、政府はフランス語の十分な運用能力も重要な条件の一つとして強調している。
 
学校教育において、フランス語を十分に話せない移民の生徒は特別クラスに分けられ(日本でも今年公開されたフランス映画「バベルの学校」に出てくる「適応クラス」がその例だ)、そこで約1年間フランス語を身に付けてから通常クラスに移る仕組みになっている。
 
この方法は、子どもたちの民族的、文化的アイデンティティを保持できるという面がある一方、通常クラスの生徒とは「分離」されてしまうことで「よそ者」だと自覚せざるを得ないというデメリットもある。また、特別クラスには非ネイティブ・スピーカーの生徒が集められることから、ネイティブ・スピーカーである生徒たちとの実践的なコミュニケーション機会に欠けるうえ、生徒同士の良好な関係を築きにくいという指摘もある。
 
一方イギリスは、いわゆる「不文憲法」国家であり、「市民」の法律上の概念は複雑かつ曖昧だ。2002年に制定された「国籍、移民及び庇護法」によると、「イギリスに関する知識と言語能力」が新しく市民となるうえでの義務として挙げられている。
 
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[写真] 筆者が訪れたイギリスの公立小学校。クラスの半数が、中東やアフリカなど他国から移住してきた生徒。
 
過去のシティズンシップ政策においても言語能力の重要性が強調されているものの、学校教育を通じた公的サポートについては触れられていない。事実、移民の子どもたちのための特別クラスは基本的に設けられていないため、移民の子どもたちも通常クラスで授業を受け、平日の夜や週末にチャリティ団体によって開かれる「補修学校」などで言語のハンデを埋めるというケースがほとんどだ。
 
フランスのケースと比較すると、他の生徒たちと「分離」こそされていないものの、十分に英語を理解できないまま「物理的統合」をされているにすぎないため、授業を理解できず学習に遅れを取り、結果的に社会的排除に繋がるリスクを孕んでいる。
 
このように、移民の子どもたちへのサポートは、言語教育ひとつを例に取っても課題が多いものの、効果が期待される実践例もいくつかある。たとえば、比較的移民受け入れの歴史の浅いフィンランドの学校では、身体を動かしながら学べる美術、体育、音楽などの授業は通常クラスの生徒と一緒に学び、言語習得のレベルに合わせて他の科目の授業にも徐々に参加していく、というアプローチが試されている。また、グループワークを通じて生徒が共に教え合う協働学習の持つ可能性も、各国であらためて注目されている。
 
「分離」でも「同化」でもない、多文化共生社会における“インクルーシブ(包摂的)な教育”の追求は、これからも続いていくであろう。日本も、欧州各国が経験してきた課題や成功例から学び、移民受け入れの議論の中で生かしていかなければならない。
 

いよいよ今日が投票日!学生も盛り上がる5年ぶりのイギリス総選挙

 
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わたしが留学しているイギリスでは、今日投開票が行われる総選挙の話題で盛り上がっています!
 
日本と同じく、イギリスでも若年層の投票率の低さが問題視されていますが、少なくともわたしの周りでは、ロイヤルベイビー誕生のニュースよりも総選挙の方がはるかに高い関心を集めている印象。3~4月は、地元の候補者を大学に呼んだ、学生主催の討論会なども多く開催されていました。
 
総選挙自体が5年ぶりなので、今回初めて選挙権を得た、という学生も多いからかもしれません(現時点でのイギリスの選挙権年齢は18歳)。それと比べると、解散総選挙が頻繁に行われる日本は「投票できる!」という喜びが薄いのかも??
 
Facebookで「投票する宣言」をしたり・・・
 
facebook_voting
 
プロフィール写真を支持政党のアイコンに変えたり・・・
(そのあとコメント欄で学生同士の討論が始まるのがお決まり)
 
facebook_profile
 
わたしが所属する学生寮オフィスからは、「今日が投票日だからね!」と全員にメールが届きました。
(留学生であるわたしには、投票権はないのですが)
こういう、大学からの働きかけも若年層の政治意識に少なからず影響を与えるのかもしれないですね。投票所もキャンパス内に設置されているし。
 
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ちなみに今日のGoogleロゴはこれです。
 
Google_logo
 
そうそう、ヨークの街では有名?な紫色のストリートパフォーマー「Purpleman」がいるのですが、みどりの党を支持する意思を表すため、いまは全身緑色らしい!(写真はこの記事から→Purpleman goes green as he makes a colourful statement on Stonegate
 
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以下、Facebook上で良くシェアされているものを中心に、選挙関連のリンクをいくつか貼っておきます。ご興味あればチェックしてみてください^^
 
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①How to vote at a polling station
(投票所での投票の流れ)
http://www.aboutmyvote.co.uk/how-do-i-vote/voting-in-person
 
②Who to vote at the General Election
(自分の考えに近い政党を知れるマッチングサイト)
https://voteforpolicies.org.uk/
 
③Where to vote tactically to get the prime minister you want
(二大政党がともに過半数を取れないと言われている中、連立政権を見据えたうえで「戦略的に」投票先を選びたい人のための候補者リスト)
http://www.theguardian.com/politics/ng-interactive/2015/may/05/election-2015-where-should-you-vote-tactically
 
④General Election timetable
(選挙期間中のタイムテーブル。投票は5月7日の朝7時〜夜10時)
http://www.parliament.uk/about/how/elections-and-voting/general/general-election-timetable-2015/
 
⑤General Election 2015 – BBC
(イギリスの放送局BBCの選挙特集ページ。速報もここで出るはず)
http://www.bbc.co.uk/news/election/2015
 
⑥Election Live – TV debate
(4月16日に行われた党首TV討論会の映像が観られます)
http://www.bbc.co.uk/news/live/election-2015-32137362
 
➆THE BRADY BLOG
(在英保育士、ライターのブレイディみかこさんのブログ。個人的に大好きで、フィード購読して勉強させていただいています!)
http://blog.livedoor.jp/mikako0607jp/
 
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個人的には、女性党首が率いる左派3党(スコットランド国民党(SNP)、ウェールズ党、みどりの党)の健闘ぶりに注目しています。教育政策のことを考えると、労働党による政権奪還を期待する部分もあるけれど、ミリバンド党首個人にはあまり惹かれなかったり・・・。党首TV討論会を観て、彼よりもSNPの二コラ・スタージョン氏のスマートさに惚れてしまいました!
 
実はわたし、修士論文のプレゼンを来週に控えているのですが、今夜はキャンパス内のバーで「Election Night」(選挙開票結果を観ながらお酒を飲む&語る、のだと思う、たぶん)が開催されるので、参加してこようと思います♪
 

食材は廃棄寸前の商品、料金設定なしのコミュニティカフェを訪れました

 
「捨てられるはずだった」食材を使った週替わりランチを提供する「yourcafe」というコミュニティカフェへ行ってきました!4月29日から6月3日まで6週間限定(水曜日のランチのみ)で、ヨーク大学から徒歩15分ほどのところにあるTang Hall Community Centreというコミュニティセンター内で運営されています。
 
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このカフェは、リーズから始まったThe Real Junk Food Project(以下、TRJFP)というムーブメントが発祥。Waste and Action Resources Programme (Wrap)の統計によると、毎年イギリスで廃棄される食料は約1,500万トン(190億ポンド相当)。一方で、The York Pressの記事によると、食料に飢えている人々を支援するために地方自治体が過去2年間で支出した金額は300万ポンド。つまり、大量の食料廃棄が発生している一方で、貧困のため満足に食べられない人々がいるという現状があり、このことに対する問題意識を高めることがカフェの一つの目的です。
 
youcafeで提供される料理は、すべて個人や地元の小売店から引き取った廃棄寸前の食材なので、その内容によってメニューが変わります。わたしが訪れたときのメニューはこちら。
 
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*ハムサンドイッチ
*ブロッコリースープ(ベジタリアン)
*トマトソースパスタ(ヴィーガン)
*ライス
*グリーンサラダ
*フルーツ・クランブルのカスタードソースがけ
*ブラン・ケーキのプラムジャム添え
*アソートケーキ
*グレープフルーツ・ソルベ
*ティーケーキ
*コーヒー・紅茶(おかわり自由)
 
わたしはパスタとクランブルをいただきました^^♪
 
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どちらもとてもおいしかった♥食後には紅茶も。
 
このカフェのもう一つの特徴は、料理に金額が設定されておらず、自分が払いたいと思った分だけ支払う(Pay As You Feel)システムになっていること。出口のところに置いてあるボックスにお金を入れるのも良し、このカフェで調理や掃除、食器洗いなどのボランティアをするのも良し。わたしは今回お金で支払いましたが、今度は何かお手伝いしたいな~と思っています。ちなみに、この日カフェで働いていた方々も、みんなボランティアでした。
 
このカフェの目的は「食料廃棄に対する人々の問題意識を高める」と同時に、「おいしい料理をみんなで食べられる場をつくることで、地域コミュニティでの孤立化を防ぐ」ことなので、たとえお金がなくてもフラッと立ち寄れて、地元の人たちとの会話を楽しめるというのは良いなぁと感じました。ともすれば生活圏が大学のキャンパスのみにとどまりがちな学生にとっても、地域住民とコミュニケーションを取る機会になると思います。わたしも、同じテーブルで相席になったジョン、クレアと楽しくおしゃべりしながらランチできました!
 
子ども用の背の低いテーブルも用意されていて、双子ちゃんが仲良く食事していました^^なごむ・・・
 
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ちなみに、個人から寄付されたお菓子やお米(賞味期限が近かったり、少し過ぎているもの)が置いてあるテーブルがあり、これも”Pay As You Feel”で持ち帰ることができます。わたしもビスケットをゲット♥
 
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とても素敵な取り組みですが、カフェを取り仕切っているマーガレットと話す中で挙げられた課題もいくつかありました。
 
・個人の意識だけでなく食料を扱う大型店舗の仕組みを変えるには?
→ほとんどのスーパーマーケットは、衛生管理に関する厳しい取り決めがあるため、賞味期限が過ぎたものを寄付してもらうのは難しいとのこと。もう店頭で販売できない商品であっても、ごみ箱から「盗まれる」のを防ぐためにわざわざ毒性のある薬を散布する店舗もあるとか。そのため、たくさんの食料を取り扱うスーパーの廃棄問題を解決するにはまだ道のりは遠いけれど、カフェを訪れるお客さんの意識が変わることで、家庭から廃棄される食料の量は減らせるという期待は持てます。
 
・コストや食材調達などの問題がある中、継続的な運営をしていくには?
→ヨークのyoucafeは6週間限定、水曜日のみのトライアル・オープン中。この期間に多くの人々に知ってもらえれば、今後長期的な運営も可能かもしれませんが、これが初めての取り組みなので、最初はまだ様子見とのこと。わたしは、週1日だけでも地元の人が集うことができる場所がある、というのはコミュニティの繋がりを強めるという意味でも良いことだと考えているので、大学の友人たちにたくさん宣伝していこうと思っています^^
 
・地域コミュニティから孤立しがちな層(お年寄りなど)にどうカフェのことを知ってもらうか?
→今回の取り組みについては地元の新聞に取り上げられたり、ボランティアスタッフが積極的に友人を呼んだりすることで、先週のオープン時はとても賑わっていたそうですが、今週はあいにくの天気だったということもあり(イギリスの雨は珍しくないですが・・・)、そこまで混み合っていませんでした。コミュニティ・センター自体が、街の中心地から結構離れた所にひっそり建っているので、いかに口コミでカフェの存在を広めていくか、というのが課題だと感じました。
 

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食料廃棄の問題は、日本も他人事ではありません。
農林水産省発表のデータによると、日本では、年間約1,700万トンの食品廃棄物が排出されており、このうち、本来食べられるのに廃棄されている「食品ロス」は、年間約500~800万トン含まれると推計されています(平成22年度推計:平成25年9月「食品ロス削減に向けて~「もったいない」を取り戻そう!~」より抜粋)
 
食料廃棄の問題への取り組みとしても、また地域コミュニティにおける場づくりという意味でも、今回訪れたyourcafeから学べることは沢山ありそうです。また何か面白いプロジェクトがあれば、ブログに書きたいと思います。
 
☆廃棄寸前の食料を使ったコミュニティカフェに関心のある方は、オルタナSさんのこちらの記事もご参考に↙↙
売れ残りのジャガイモが食材!? 廃棄食料によるカフェ英国で | オルタナS
 
☆食品ロス(フードロス)を引き取り、人々へ届ける活動を行う日本初のフードバンク「セカンドハーベスト・ジャパン」さんについてはこちら↙↙
SECOND HARVEST(セカンドハーベスト・ジャパン)
 

【DEAR連載④】シティズンシップ教育が抱える課題とは?(2015年4月号)

 
DEAR(開発教育協会)の会報誌「DEARニュース」で、隔月の連載記事を持たせていただいています。
タイトルは、【ヨーク大学院留学記〜イギリスに学ぶ地球市民教育〜】。
本来、DEAR会員限定の出版物なのですが、発行後に許可を得たうえでこのブログでも寄稿記事をご紹介します。
 
☆これまでの連載記事は、「DEAR連載」のタグからまとめて読めます。
 
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■第4回 シティズンシップ教育が抱える課題とは?
 
市民(シティズンシップ)教育とは、一言で言うと「積極的に社会参加するための理解とスキルを身に付ける」ための教育です。イングランドでは2002年から「シティズンシップ」がYear9~10(13~15歳)の必修科目として導入されるなど、市民教育に力を入れている国と言えますが、ここではあえて、内容面での課題を二点挙げます。
 
まず、社会における少数派(マイノリティ)を排除しかねない性格を持つという点。これはイングランドに限らず他のヨーロッパ諸国にも言えることですが、移民や難民、亡命者など国境を越えた人の移動が加速する中で、「誰にどこまで市民権を認めるのか」、「(特に民族的)マイノリティをどう社会に包摂していくのか」という問いに市民教育は応えきれていません。近年ではテロリズムなどの緊張が増していることもあり、「多様性(Diversity)の尊重」と「社会的対立(Social conflict)」のバランスをどう取っていくのか、教育現場では模索が続いています。
 
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[写真]イングランドの公立小学校で行った、多様性理解ワークショップの様子
 
次に、市民が果たすべき責任と比べて、政府の責任を市民が要求する権利が強調されていない点が挙げられます。市民教育が掲げる「民主主義的な社会参加」には、政府や国際社会への批判的な姿勢も求められます。しかし、政府主導のナショナル・カリキュラムに従う以上、学校で教師が伝えられる内容に限界があるのも事実です。そのため、市民教育が愛国主義的な内容になりがちであると批判する研究者もいます。これは、日本の道徳教育・公民教育にも共通する部分があるかも知れません。
 
このように、経済や政治システムがグローバル化する中で、もともと国家の枠組みの中で発展してきた「市民(権)」の概念が揺らぎ、市民教育の課題も出てきています。最近では、世界の中の一市民としての責任を果たす「グローバル市民(地球市民)」という言葉も聞かれるようになりましたが、排他的な性格を持つ「市民(権)」という概念を、グローバルな文脈で論じる際に生じる矛盾についても慎重な議論が必要だと私は考えています。
 
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★DEAR(開発教育協会)入会のご案内はこちらのページから。
 

「エシカルな選択ができない」という罪悪感

 
2年前(2013年)にバングラデシュ・ダッカ郊外の縫製工場崩落事故が起きた今日、4月25日はFashion Revolution Day(ファッション・レボリューション・デー)ということで、日本、イギリスを含む世界66ヶ国で、#whomademyclothes(わたしの服を作ったのは誰?)のハッシュタグを付けたSNSキャンペーンが展開中です。
 

ファッションレボリューションのきっかけとなった縫製工場の崩落事故は1,133人の犠牲者と2500人以上の負傷者を生み出した。その工場ではアメリカの小売大手ウォールマートやイギリス発のファストファッションブランドのプライマークなど大企業の製品も含めて生産されていたことが後に判明した。
 
労働者の多くは低賃金でほとんど休憩なしの長時間労働を強かれていたことも浮き彫りになりファッション業界のサプライチェーンにおける透明性が問われる事態となった。透明性はファッションレボューションが業界に訴えようとしているのものでもある。透明性が増すことによって、どこでどのように作られた原料からどの国の縫製工場で生産されどのような過程を経て販売されているのかが明らかになることが期待できる。

(抜粋:SNSでファッション業界のあり方問う ムーブメントは世界66カ国に | オルタナS

 
わたしが暮らしているイギリスは、「エシカル(※)先進国」と言われることも多いですが、いわゆる「ファストファッション」と言われるブランドも人気です。
 
エシカル(Ethical):直訳すると「倫理的な」という意味ですが、「環境や社会に配慮されている」姿勢や商品を表す言葉として使われています。
例)児童労働などの搾取がなく、生産者の安全な労働環境や人権を守ったうえで、正当な価格で取引されたフェアトレード商品など。
 
わたしは、Webマガジン「Huglobe!」などを通じてエシカルファッションについて積極的に発信してきた方だと思います。でも、貧乏留学生としてイギリスで生活する中で、なるべく価格の安いものを選ばざるを得ないこともあって、日本にいるとき以上にジレンマを抱えています。
 
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Photo from spadesandsilk.com
 
大学生のとき、セルビアの難民キャンプや、子どもの権利を守るために活動する国際NGOでボランティアをしていたわたしは、いわゆる「国際協力」に燃えていました。だから、そういった活動に参加していない友人にも、自分が強い関心を持っている貧困や児童労働などの課題について話すことがありました。
 
でもそのときに、
「そんなこと言われたって、今の時点でわたしにはどうすることもできない。ボランティアする時間も、寄付するお金もない。でもその問題について少し知ってしまったがために、罪悪感だけ残るじゃない!
 
と言われ、ハッとさせられたことがありました。
 
「かわいそう」ではなく「かわいい!」というキーワードをフックに、普段の生活に結びついた「買い物」を通じてソーシャル・アクションを促すWebマガジンを作ろうと思ったのも、そういった経験があったからです。
 
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「社会的課題解決の一歩は、まずはその課題を知ること」
 
とは良く言いますが、知ってしまったがために、「それに対して何のアクションも起こさない自分」に気付いて、罪悪感が大きくなることもある。
 
わたしも、今それと同じ状況。ファストファッション産業の背景にある、労働搾取などの問題をある程度理解しているからこそ、経済的な理由から個人の生活を優先させざるを得ないとき、気持ちがズンと重くなる。
 
単価の安い食料(チョコレートやバナナ、紅茶など)はなるべくフェアトレード商品を買うようにしていますが、それすらも、「洋服はファストファッションブランドしか買えないけど、フェアトレードのものもちょこちょこ購入しているからOK」と自分を納得させるための行動に思えてきてしまったり。
 
今回のSNSハッシュタグキャンペーンも、同じような理由で、「エシカルな選択ができていないのに、こういう拡散キャンペーンだけ乗っかるのは気が引けるな・・・」という個人的なモヤモヤから、悩んだ結果、参加しませんでした。
 
ヨーロッパに比べると、まだまだ日本では、エシカルの市場規模が大きくないので、「簡単に買えないから仕方ない」という言い訳が通用するかもしれない。
 
でも、手軽にエシカルな商品を購入できるイギリスにいるからこそ、「選びたい」のに「選べない」というジレンマに悩まされる。
 
「知らない方が幸せ」だとは思いません。見て見ぬふりをするよりも、知ろうとする人生の方が豊かだと、個人的には思います。
 
でも、選択肢が多いがゆえに生まれてしまう苦しみもある。エシカルに限らず、さまざな場面で言えること。
 
このことについて、くるっと綺麗にまとまった結論は、書きません(書けません)。
ただ、Fashion Revolution Dayを機に、エシカルに対する現時点の自分の素直な気持ちを綴っておきたいなと思ったのでした。