├イギリス大学院留学

ICEDC学会レポート「多文化環境における教育:人権のための闘い」

 
イギリスの大学院に留学してからはじめて、学会に出席してきました!
と言っても、わたしはプレゼン発表をしたわけではなく、聴講のみです。
(いつか、PhD(博士課程)に進む日が来たら、こういう場で発表できるようなリサーチがしたい!)
 
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London, UCL)のロンドン大学教育研究所(Institute of Education, IOE)中にある、International Centre for Education and Democratic Citizenship (ICEDC)が毎年開催している学会で、主催者はProf Audrey OslerとProf Hugh Starkey。わたしは研究者向けのSNS「Acacdemia.edu」でAudreyをフォローしていたので、この学会のことを知ることができました。
 
第9回目となる今回のテーマは、
Education in Multicultural Settings: the Struggle for Human Rights
(多文化環境における教育:人権への闘い)
でした。
 
わたしが強い関心を持ってヨークで研究しているグローバル教育・シティズンシップ教育・人権教育のトピックに強い関連があり、ぜひ参加したいと思ったため、朝5:30に起きてはるばるロンドンへ!ヨークからロンドン(キングスクロス駅)までは、電車で2時間ほど。
 
ICEDC_1
 
学会では、10名以上の発表者(教授やPhDの学生など)によるプレゼン(各15分程度)を聞きました。かなりのボリュームなので、それぞれのポイントをかいつまんで日本語でもまとめておきます。
 
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■(基調セッション)Dr Samia Bano (Senior Lecturer in Law, Centre of Isalamic and Middle Eastern Law (CIMEL), SOAS, University of London)
テーマ:多文化社会イギリスにおけるムスリム女性の経験
 
・現在起こっている議論:インフォーマルな宗教法システム/多文化主義/ジェンダー差別
例)学校でヴェールを脱ぐ権利、職場でジルバブを着用する権利など
・シャリア(イスラム法)を守りつつも、どの程度ムリスム女性が自らを自由に表現できるか?
・2011年Family Justice Review:パブリック・スペース(子どもの保護など)に関する法制度の改革の必要性と、プライベート・スペース(離婚など)における手続きの簡素化(仲介など)について言及。
・研究命題①:家族、コミュニティにまつわる複雑性(家族法周辺の課題)
(宗教的コミュニティの仕組みは、政府の公的介入をほとんど受けずに「プライベートな」ものとして運営されていくべきか?)
・研究命題②:「公的システム」VS.「宗教的コミュニティ」
(行政的な離婚手続きだけでなく、The Muslim Law Shariah Council UKに「離婚証明書」の発行を申請するムスリム女性たち→宗教的コミュニティへの帰属意識・アイデンティティが強い)
 
 
Kerim Sen (UCL IOE PhD)
テーマ:トルコにおける過去20年間のシティズンシップ教育改革の変遷
 
・世俗主義的ナショナリズム:教育カリキュラムは、政府のイデオロギーを伝える手段として捉えられてきた。
・カリキュラム改革①(1997~2012年):非軍事化(demilitarisation)
・カリキュラム改革②(2012年~):イスラム教化(Islamisation)→シティズンシップ・民主主義的教育の削除→宗教的ナショナリズムへ
・シティズンシップ教育のカリキュラムとしての不安定さが露呈されている。
 
 
Adem Ince (University of Leeds, PhD)
テーマ:トルコにおけるシティズンシップ教育が民族的マイノリティグループに与える影響
 
・既存の教育カリキュラムはナショナリズムによって支配されており、ケマリズム(アタトゥルク主義)と同一視されている。
・教科書では”Turkishness”(トルコ人らしさ)が賞賛され、そのことがマイノリティグループの排除に繋がっている。
・国民の44%がマイノリティグループを「あまり信用していない」、29%が「全く信用していない」という調査結果も。
・今後の研究では、シティズンシップ教育政策と実践が特にクルド(Kurds)の人々に与える影響に焦点を当てる。
 
 
Dr Yuka Kitayama (Buskerud and Vestfold University College, Norway)
テーマ:ダイバーシティ、シティズンシップ、そして日本における極右派の隆盛
※北山夕華博士はわたしと同じヨーク大学のMA卒業生で、平成25年度から日本学術振興会の海外特別研究員として「ノルウェーにおけるシティズンシップ教育と社会的包摂」について研究されています→HBV welcomes researcher from Japan – hbv.no
 
・背景:戦後、愛国主義的な表現がセンシティブな問題に/移民の増加(外国籍人口は全体の2%)/民族的マイノリティは500万人(全人口の3.3-4.8%)というデータも。
・2011年時点で登録されている外国籍人口:中国(32.5%)韓国(26.2%)ブラジル(10.1%)フィリピン(10.1%)→日本語話者含む。
・政治におけるナショナリズム:人気のある右派政治家(石原慎太郎氏など)、中国や韓国との領土問題、歴史教科書問題(90年代~)、2006年の教育基本法改正(愛国主義的)、道徳教育をめぐる論争、君が代・日の丸問題など。
・インターネットの発達により、右派ムーブメントが一般市民にとってもアクセスが容易に。
・外国人嫌悪、特に韓国人に向けたヘイトスピーチ:民族的マイノリティの学校が人種差別主義デモの標的に。また、子ども自身が右派デモに参加することも。
・学校教師、言語アシスタントなどへのインタビュー:教師同士での偏見(民族的マイノリティ出身の教師やPTAメンバーの不足)、マスメディアや両親からの影響(「韓国人とは仲良くなるな」等)
・偏見や差別をなくすための個人的な努力だけではなく、組織的な取り組み・法的枠組みでの検討も必要。
 
 
■(基調セッション)Prof Gus John (Chair of the Communities Empowerment Network and associate professor of education at the UCL Institute of Education, London)
テーマ:インクルーシブ教育の推進、学校と子どもの権利の視点から
 
・「全員いっしょ(The one-size-fits-all)」の学校システムは、特にアフリカの伝統的コミュニティにおいて、社会的排除を促進している。学校という場が市場主導になってきており、労働市場で使えるスキルを身に付けさせ、「適応できるものだけが生き残れる」場になってしまっている(つまり、「排除」は管理のために不可欠なものとみなされている)。
・学校システムから排除されてしまう子どもたちの多くは、Special Educational Needs(SEN:特別な教育的ニーズ)を抱えている。
・2010年に平等法(Equality Act 2010)が成立したが、現状としていまだに適切な支援を受けられていない子どもたちは多い。子どもの権利という視点から、学校システムの在り方を問い直すべきである。
 
 
Sneh Aurora (Amnesty International)
テーマ:人権フレンドリースクールの取り組み:学校全体で平等、インクルージョン、ダイバーシティを推進するアプローチ
 
・アムネスティ・インターナショナルでは、Human Rights Friendly Schools(人権フレンドリースクール、以下HRFスクールと表記)というプロジェクトを実施している。学校生活を通して人権尊重の理念を体現するため、学校コミュニティの全てのメンバーの積極的な参加を促すための取り組み。現在世界20ヶ国以上で展開中(アジアではモンゴル、インド、韓国で実践例がある)。
・キーワード:差別をしない、インクルージョン、参加、説明責任、カリキュラムや教育メソッドを通したエンパワーメント
・生徒だけでなく、学校コミュニティのメンバー(教師や他のスタッフ含む)全体をエンパワーメントする。また、机の並び方やトイレ環境など、学校の生活環境を通して平等や尊厳が守られるようにする。
・ただし、HRFスクールとして認められるための「基準」をクリアしなければならない、というものではなく「ガイド」に基づいてプロジェクトを推進していく学校を増やしていこうという趣旨。
・実践例①アイルランド:全生徒数の10%が移民の子どもたちという学校において、さまざまな言語で書かれたあいさつを玄関や廊下に飾るなど、民族的アイデンティティにとらわれないインクルーシブな環境づくりを推進。その結果、人種などの違いだけでなく他のマイノリティ(LGBTなど)への生徒への関心・理解も高まってきている。
・実践例②ハンガリー:ロマのコミュニティにおける学校で、教師、生徒共に自信の欠如が課題となっていた。地域のNGOと協働してHRFスクールとしてのプログラムを推進していったことで自己肯定感が高まり、学習成果も改善されてきている。
 
 
Mai Abu Moghli (UCL IOE, PhD)
テーマ:パレスチナ自治政府が運営する西岸地域の学校における人権教育
 
・西岸地域、ガザ地区両方において、公民教育のカリキュラムの中で人権教育が謳われている。
・公民の教科書では人権について多く述べられているものの、実際の内容については、複雑な社会状況を鑑みて注意して見る必要がある。
・たとえば、学校運営が外国からの援助に頼っているため、援助機関の望むアジェンダ(平和構築プロセスにおける非政治化など)と相反する内容は盛り込めない。
・教育省の新しい戦略(2014-19年)では人権教育(ジェンダー平等など)に重きを置くとされているが、実際はナショナリズム的な内容になっている。たとえば人権そのものよりも、それを得るための国民としての義務の方が強調されており、自由を追求するための闘争については言及されていない。
・今後の研究では、西岸地区の5つの学校に焦点を当て、パレスチナ自治政府統治下での人権教育の内容を形成する要因や、教師・生徒の感じ方、どの程度生徒の社会参加につながっているかを分析する。
 
 
Dr. Ioanna Noula (University of Thessaly, Greece)
テーマ:「二分化」するシティズンシップ:新自由主義時代におけるギリシャの小学校でのアプローチ
 
・小学校6年生のクラスでの観察、インタビューを通して、教室で実践されている教育アプローチと、生徒たちがどのようにシティズンシップを捉えているかを研究。
・ギリシャでは経済危機、移民や亡命者の増加などによるパラダイム・シフトが起こっている。国民の経済的不安から外国人嫌悪や人種差別といった動きが顕著になってきている。
・教育現場においても、生徒をエンパワーメントするための教師のモチベーションが低下傾向にある。
・リサーチ成果:大学入試のプレッシャー(とそれに伴う保護者の期待)が、教師の教育アプローチの選択に影響を与えている。また、小学校・中学校においては、教科の階級化(成績評価のある教科は重要視されるが、それ以外は軽視される)が見られる。その結果として、教師は生徒と対話を通じた関係性を築き、社会参加に向けて力づけることに消極的になっている。
・二分化:ギリシャ市民vs.移民や難民、ギリシャ市民vs.政府
・競争原理が優先されることで、生徒の社会疎外が懸念される。
 
 
Hein Lindquist and Prof Audrey Osler (Buskerud and Vestfold University College, Norway)
テーマ:ノルウェーのシティズンシップとダイバーシティ
 
・ノルウェーには、大きく分けて3つの民族的マイノリティが暮らしている:(1)先住民族(Sami)、(2)ナショナル・マイノリティ(Roma, Jews, Tatarなど)、(3)移民。
・ノルウェー語の習得は個人の努力に委ねられており、非ネイティヴスピーカーの社会排除に繋がっている。
・また近年のテロ攻撃の増加(パリ、コペンハーゲンなど)により、先に挙げたマイノリティグループに対するヘイトスピーチや、法規制の厳重化の傾向が見られる。→このような課題に対して、学校や幼稚園はどのような教育を実践していくべきか?
・ノルウェーとデンマークの中学校を対象にしたAttitudes to Human Rights and Diversity in Education(ATHURDE)プロジェクトの調査結果:クラスルーム・マネジメントと、教師のサポートが、生徒の幸福度、モチベーションに大きく影響する。
・ダイバーシティ、人権を尊重する文化を構築することが学校教育でも求められる。
 
 
Prof Nilda Stecanela (University of Caxias do SUl, Brazil)
テーマ:ブラジルの義務教育:教育へのアクセス、学習、対話をめぐる権利
 
・ブラジルの義務教育期間の変遷:4年(1971-)→8年(1996-)→9年(2006-)→14年(4-17歳:2013年-)
・就学年齢に達している子どものうち約95%が学校教育にアクセスする権利を保障されている。しかし、学習に対するモチベーションや関心が低い子どもも少なくないこと、学校教育と家庭教育の境界線が曖昧であることなどから、「教育にアクセスする権利」と「義務教育を受けなければいけない不快感」のジレンマが生まれている。
・教育にアクセスする権利だけでなく、学習することに対して子どもたちの意見を聞くこと、支配者(教師)と被抑圧者(生徒)の二分的な構造ではなく互いに尊重し合う関係を構築すること(パウロ・フレイレが論じた「対話」)、コミュニケーションを仲介するのは文化であることを理解すべきである。
 
 
■(総括パネルセッション)Prof Audrey Osler, Prof Gus John and Prof Hugh Starkey
 
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・共通の傾向:新自由主義(ネオリベラリズム)の台頭、不明瞭な政策議題、異なる出自を持つ生徒たち。
・イギリスでは今、SMSC(spiritual, moral, social and cultural development:精神的、道徳的、社会的、文化的発達)の授業を通して「イギリス人の価値観(British Values)」を教えることが義務づけられているが(参考記事:「イギリス人の価値観」を学校でどう教えるか?【前編】)、ベースにあるべきは人権尊重の姿勢である。
・しかし、人権のフレームワークだけでは不十分。政府に対して抵抗・挑戦し、社会正義を達成するための手段として法律を用いることが必要であり、学術界はそうした状況に挑戦し続ける場所であるべきである。
ポストコロニアル理論と人権尊重の姿勢を持ち合わせること。そのアプローチはもちろん課題もあるが、社会的にのけ者にされがちなマイノリティグループの視点を意識するという意味で重要。
・問い:認識的(cognitive)、情緒的(affective)、能動的(active)な側面から若年層を支援するにはどうすればよいか?
 
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以上、箇条書きですが学会レポートでした。
シティズンシップという概念は、時代や国など文脈によって常に変化していくものであり、ローカルの現実とグローバルな課題の両方を注視していくべきであるということを、世界各国(イギリス、日本、トルコ、パレスチナ、ギリシャ、ブラジルなど)の研究発表から実感することができました。
 
日本の教育において「人権尊重」と言うと、「途上国の子どもが・・・」「いま紛争が起きている地域では・・・」と海外の問題にばかり目が向いてしまう傾向があり、国内におけるシティズンシップ、人権をめぐる課題が軽視されているように感じます。
テロの脅威や経済危機など世界情勢が不安定になり、ナショナリズム的な思想が各国で隆盛する中、いわゆるマイノリティグループ(人種、ジャンダー、障がいなど)の社会的包摂は、共通のグローバル課題と言えます。若年層の社会参加という文脈において、そもそも参加が阻まれている層(外国にルーツを持つ子どもたちなど)をどうサポートし、また政策提言していくのか、というテーマについて、今後も考えていきたいと思います。
 

欧州評議会・南北センターのオンラインコース奨学生に選ばれました

 
先日の記事にも書いたとおり、ヨーク大学修士課程の授業はすべて修了したのですが、欧州評議会・南北センター(the North-South Centre of the Council of Europe)とネットワーク大学 (The Network University:アムステルダム大学をルーツに持つ、協働学習(Collaborative learning:コラボレーティブ・ラーニング)センター)が提供する短期オンラインコース(1ヶ月間)を受講できることになりました!全額奨学金付きなので、なんと無料で受けられます・・・ありがたや!
 
CNS_logo
Image from North-South Centre
 
Global Education: The Citizenship Dimensionというタイトルで、「グローバル教育をシティズンシップの視点から考える」という、まさにわたしの問題意識・研究関心に合致しているコース。募集締め切り1週間前に、他学部の友人が「これMioの興味に近いんじゃない?!」と紹介してくれ、(修士論文の執筆と並行して受講するのは大変すぎるかな・・・)という迷いも少しありつつも、「全額奨学金がもらえたらぜひ勉強したい!!」と勢いで応募書類を書き上げたので、念願叶って奨学生に選ばれ、本当にうれしいです。
 
最低でも週10時間、このコースを受ける必要があり、個人でのオンライン学習のほかにペアワークやグループワーク、それに基づいた課題提出も求められるので、午前中はコース受講、午後は修士論文の執筆、というスケジュールで進めていくつもりです。
 
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■参加者
参加者リストによると、下記の国から44名が受講するようです。
 
・アフリカ(モロッコ、トーゴ、チュニジア、コートジボワール、ガーナ、コンゴ、シエラレオネ、アンゴラ)
・ヨーロッパ(アイルランド、ギリシャ、リトアニア、ルーマニア、イタリア、フランス、キプロス、ノルウェー、ラトヴィア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、クロアチア、スペイン、フィンランド、ポルトガル、ドイツ、スロヴェニア、セルビア)
・中南米(アメリカ、コスタリカ、メキシコ)
・ロシア
・日本(わたしのみ)
 
■コースの目的
グローバル化する世界において、社会正義(social justice)と持続可能性(sustainability)に向けた変革に向けて、民主主義的シティズンシップ(democratic citizenship)に関連する問題に取り組んでいる人向けのコース。主な目的は下記のとおり。
 
・シティズンシップの省察、協働デザイン、ローカル/グローバルなアクションのための協働的なスペースの提供。
・シティズンシップ、市民参加(civic engagement)、グローバル教育の文脈における参加に関連する既存概念の再考察。
・グローバル化する世界における、シティズンシップ教育に対する既存の政策アプローチへの疑問提示。
・シティズンシップに対する新しいアプローチの創造と、それに付随する課題をスケールアップするための省察。
・社会正義と持続可能性につながる、インパクトのあるシティズンシップを文脈に応じて発展させるため、必要とされる能力(competences)と可能な道筋の認識。
・考える人、実践する人、イノベーター、その他の関連するアクターを繋げること。
・インパクトを増大させるためのメカニズムへのサポート強化。
 
■カリキュラム内容
4週間にわたって開講されるコースで、毎週異なるモジュール・課題を修了する必要があります。
 
・Module 1: Exploring Democratic Citizenship in a Globalised World
(モジュール1:グローバル化する世界における民主主義的シティズンシップの探究)
 
・Module 2: Co-Design of Impactful Democratic Citizenship Action
(モジュール2:インパクトのある民主主義的シティズンシップ・アクションの協働デザイン)
 
・Module 3: Competences and Strategic Paths for Transformative Citizenship Action
(モジュール3:変革のためのシティズンシップ・アクションに向けた能力と戦略的道筋)
 
・Module 4: Support Structures and Tools for Collaboration for Follow-Up
(モジュール4:フォローアップのための協働に向けた構造とツールのサポート)
 
個人で提出する課題もあれば、同じコースの参加者の中からパートナーを見つけ(Facebookの限定グループなどで呼びかけ)、共同作業を求められるものもあります。
 
わたしはいま、モジュール1に取り組んでいるところなのですが、「シティズンシップをめぐるジレンマ」について考える課題で、ラトヴィア出身の女性に声を掛け、オンライン上で意見交換しています。もともとわたしは、「ラトヴィアの人口の10%を無国籍者やノン・シティズン(non-citizens)が占める」という状況に関心を持っており、そうした国出身の彼女ならではの意見を聞きたい、と期待したためです。また、お互いにノン・フォーマルな教育の分野での職務経験があり、市民参加を促進するためのエンパワーメントについても問題意識が近いため、初っ端から刺激を受けています!
 
■そのほかの特徴
・(前述のとおり)個別学習だけでなく、オンラインでの相互アクションが求められる。
・プラットフォーム上に「フォーラム」というページがあり、コースに関連するトピックについて意見交換できる。
・学習内容に対して質問があるときや課題を提出した際には、チューターが速やかに返答してくれる。
・トップダウンのコースではなく、受講者から運営スタッフにフィードバックや改善提案を出せる。
・コース修了後も、マイページにログインすれば提供資料などを閲覧することができる。
 
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・・・と、このようなコースになっています。修士論文と並行しての受講は、時間的制約があり、簡単ではありませんが、自分の研究内容に強く関連するテーマですし、何よりこれまで取り組んできた修士課程の勉強がベースにあるからこそ深められる内容だと感じています。
 
複数のNGOでファシリテーターとしていわゆるグローバル教育に携わってきて、
ヨーク大学の修士課程でシティズンシップ教育を学んできたいま、
「その双方を合わせて考えたときに避けられないジレンマについて研究し、今後必要とされるプログラムを考えていきたい」と新たな問題意識が芽生えたタイミングで出会えたコース。
 
自分の視点に固執するのではなく、さまざまなバックグラウンドを持つ他の参加者との相互アクションを通して、「多文化共生社会における市民参加・シティズンシップ教育」という自分のテーマについてさらに深く学びたいと思います!がんばるぞ~^^
 

正式に・・・修士課程の授業をすべてパスしました!

 
すでに修士論文を除く全てのモジュール成績は出ていましたが、
 
“Successfully Completed Taught Element – Progress to Independent Study Module”
(授業課程は無事に完了しました-自主研究モジュールへ進んでください)
 
と、あらためて大学側から通知がありました。「自主研究モジュール」とはつまり、修士論文を書くための研究と言うことですね。
 
Completed Taught Element
 
わたしの平均マークは、何とか70点(Distinction:イギリスの修士課程では70点以上が一番上の成績レベル)に乗っている状態。このまま良い成績で終えたい!
 
ちなみにここまでの成績は以下の記事にまとめてあります。
 
秋学期の成績発表と、ひそかな野望について。
春学期の成績発表。残るは修士論文のみ!
 
実はいまちょっと、リサーチでトラブル発生しているのですが(涙)、今月はシティズンシップ教育関係の会議(@ロンドン)、グローバル教育関係の研修(@ヨーク)、そして新たに受講することになったオンラインコース(詳しくはまた書きます♪)がスタート・・・と盛りだくさんなので、時間管理をしっかりして乗り切らないと。
 
留学に来て以来、ほとんど旅行する時間も取れないまま突っ走ってきましたが、来月は自分へのご褒美に?一週間ほどイタリアへ行く予定なので、それまでに修士論文を進められるだけ進めたいと思います・・・!
 
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Photo from parkcircus.com
 

春学期の成績発表。残るは修士論文のみ!

 
春学期(Spring term:1~3月)の成績が(忘れた頃に・・・)発表されました!
課題エッセイ(レポート)の提出期限が4月中旬で、成績発表が5月下旬です。
 
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▲わたしが住んでいる、ヨーク大学のHeslington Eastキャンパス♪
 
 
春学期のメインモジュールは、エッセイ(レポート)が2本で、今回は試験はありませんでした。
それぞれの結果と教授からのフィードバック、イギリスの大学院の成績基準などについてご紹介します!
 
☆それぞれのモジュールの具体的な授業内容については、以下の記事をご覧くださいね。
>>春学期(1~3月)の授業&活動まとめ
 
■大学院の成績基準について
試験もエッセイも、50点以上で合格です。合格・不合格の中で、次のようにランクが分かれています。
 
☆Pass(合格)
Distinguished*(優) 100 – 70 *Distinctionと同じ。
Merit(良) 69 – 60
Satisfactory(可) 59 –50
 
☆Fail(不合格)
Marginal fail(埋め合わせ可能) 49 – 40
Outright fail (埋め合わせ不可)Below 40
 
エッセイの場合、70点以上取れれば上出来、80点代はネイティブでも滅多に取れないという基準です。評価の公平性を保つため、全て匿名(試験番号のみ記入)で提出します。
 
■わたしの成績発表!
前回同様、まずオンラインで結果を確認し、教授陣からの具体的なフィードバックは学部のレセプションに直接取りに行きます。今回はあまり自信がなかったので(パスするのは当然として)、かなりドキドキしながらマイページを開けます・・・
 
Term2 Module Results
 
最高ランク(Distinguished=優)と、2番目のランク(Merit=良)でした!
想像していたほどひどくはなかった・・・!(60点代前半もありうると怯えていました)
 
ちなみに「Planning & Communicating Research」というモジュールが「Pass」と表記されているのは、修士論文のプロポーザルに基づいたプレゼンテーション(5月中旬)に合格した、ということです。
(いま現在、とある大学の学生さん向けにリサーチを行っている最中で、その回答内容に影響があるといけないので、データ回収が終わったあとにプレゼンの内容をブログに書けたら、と思っています)
 
今回もエッセイについて個別のフィードバックをいただいているので、ご紹介します。
秋学期の成績についてはこちら→「秋学期の成績発表と、ひそかな野望について。」
 
①Teaching and Learning Citizenship and Global Citizenship(シティズンシップ教育&グローバル教育の教授と学習):68点(Merit)
 
わたしのMAコースの必須モジュール。わたしは「グローバル教育とシティズンシップ教育は同じかどうか?」というタイトルでエッセイ(5,000語)を書きました。
 
グローバル教育とシティズンシップ教育は重なるところもあれば、相容れない部分もあります。そのため、ユネスコなどが推している「グローバル市民教育(Global Citizenship Education)」という言葉も、一見すると理想的ですが、個人的には注意して使うべきだと考えます。
 
そこで、グローバル教育・シティズンシップ教育それぞれの「キーコンセプトと内容」、「用語の使い方(学者、政策立案者、国連、NGOなど立場によって異なる)」そして「”コミュニティ”の捉え方」を比較し、メリット・デメリットを論じました。
 
・・・が、表面的な論理展開になってしまったなぁ、いまいち深く踏み込めていないなぁと感じたので、あまり自信が持てなかったのです(そして、その点についてしっかりフィードバックをもらえて、自分のエッセイに足りなかったものに気付くことができました)。結果、割と良い点数はもらえたものの、「シティズンシップという切り口で捉えるグローバル教育(特にそこで排除されてしまう人への視点)」は今後も勉強していかなければ、と思っています!
 
***教授からのフィードバック***
☆Searching sources(情報源の探究)
文献に対する取り組み方に、素晴らしいセンスがあります。基本的には、主に学術的資料、またその他のタイプの文献をまとめており、それは良いのですが、もっと実証的なデータも扱う余地があるかもしれません。
 
☆Analysing data and ideas(データとアイディアの分析)
良く書かれたエッセイです。エッセイの最初と最後に、シティズンシップ教育とグローバル教育に関する大変印象的なアイディアを示しています。あなたは文脈を良く描写し、効果的に文献を用いて新しい洞察を展開させています。もしかすると(前述のとおり)分析を深めるためには、経験に基づいた実証的な文献をもう少し使うと良いかもしれません。
 
さらに高得点を取ろうとするならば、キーとなる用語について明確に述べる必要があります。一番の課題は、このエッセイの中心となる章で、メインの議論との一貫性がないまま展開されている記述があることです。それでも、これは大変良いエッセイでした。
 
☆Written communication(ライティングによるコミュニケーション能力)
基本的には、あなたのライティング・コミュニケーションは良いです。このエッセイは良く構成され、良く意見を伝えています。時々、不正確な箇所がありました(例:”getting blur”)。
→”getting fuzzy”と書くべきだった。なぜこんな間違いをしたんだろう・・・。
 
 
☆Other comments on the assignment(その他のコメント)
大変良くできたエッセイです。
 
☆Targets for improvement(改善に向けた目標)
注意深くプルーフ・リーディング(文法ミスなどのチェック)をしましょう。もっと重要なのは、エッセイの中心セクションをあなた自身の議論においてキーとなる観点と直接結びつけることです。
 
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②Contemporary Issues in Teaching(教育の現代的課題) :70点(Distinguished)
選択モジュールとして取っていた授業。移民の子どもたちに対するインクルーシブ教育はどのように促進できるか?というタイトルでエッセイ(5,000語)を書きました。
 
特に言語サポートに焦点を当て、イギリスとフランスにおける教育政策を比較したうえで、多文化共生社会においてどのようなアプローチが必要なのか、フィンランドなどの例を挙げて論じました。
(ちなみに、その一部をウェブメディアに寄稿しています→「欧州の「インクルーシブ」教育とは~移民受け入れに備える日本が学べること」
 
自分で決めたトピックだったので、もちろん高い関心を持って書き始めたエッセイでしたが、実際にある程度効果を上げている学術的な文献を探して分析したかったなぁと力不足を痛感。そのため、70点というマークを見て少し驚き。フィードバックにもある通り、「インクルーシブ教育」という用語に対する深い分析が足りませんでした(むしろ、そういう「便利な」言葉に縛られずに持論を展開すべきだったかも)。
 
***教授からのフィードバック***
☆Searching sources(情報源の探究)
あなたは、幅広い情報源(ソース)を上手く活用できています。いくつか誤りや省略があるものの、基本的にはAPAスタイル(※教育分野の学生が使わなければならない、レファレンス・スタイル)に沿っています。
 
☆Analysing data and ideas(データとアイディアの分析)
複雑なアイディアを幅広くカバーし、高いレベルの理解力を示しています。また、関連する最近の統計にも触れています。
 
☆Written communication(ライティングによるコミュニケーション能力)
あなたのライティングは、いくつか誤りがあるものの基本的には正確です。
 
☆Other comments on the assignment(その他のコメント)
大変興味深いエッセイでした。まず、とても面白いタイトルから始めています。あなたのカバー範囲は広く、関連する膨大な資料を用いて、それらを上手く活用しています。多くの複雑なイシュー、そしてその展開について最新の情報を提示しています。あなたが示したフランスとフィンランドの例は興味深かったです。しかしながら、このエッセイの中心となる議論が不明瞭で、それにより「インクルーシブ教育」が意図するところも曖昧になっています。
 
☆Targets for improvement(改善に向けた目標)
批判的なフォーカスを持続させること。
 
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■まとめ。
今回の2つのエッセイに共通する課題は以下の2点だと思います。
 
・実証的データを織り交ぜた深い分析が不足していた。
・メインの議論へのフォーカスが甘かった。
 
わたしは、膨大な量の文献を読み進めたり、幅広いソースをバランス良く扱ったりすることには長けているかもしれません。しかし、より説得力のある議論を展開し、メインとなる主張を裏付けるためには、フォーカスグループなどのデータも用いるべきだったな・・・と。ただ通常ターム中の課題エッセイでは、自分で何かリサーチしてその結果を用いる、ということはできないので、たとえば過去のケーススタディに言及するなど、工夫するべきでした。
 
修士論文執筆にあたっては、自分のリサーチ結果に基づいたディスカッションを展開する余地があるので、リサーチ・クエスチョン(研究にあたって立てた問い)を常に念頭に置いて、横道に逸れないように気を付けたいと思います!
 
また、実は今回、秋学期のエッセイとは異なる小さな試みを2つしました。
 
【試み①】プルーフ・リーディング(文法やスペルのチェック)をネイティブスピーカーに依頼しなかった。
 
→秋学期は、知人の親戚(イギリス人)の方に1,000語あたり10ポンド(計10,000語だったので100ポンド)をお支払いし、プルーフ・リーディングをお願いしました。
たしかに細かい部分(theの使い方など)を直してもらえるので、(英語として)パーフェクトなエッセイには仕上がるのですが、わたしは目立った訂正がなかった(1ページあたり1,2箇所)のと、何より結構お金がかかるので、春学期は誰にも頼ます、どんな評価が来るか賭けてみようと思ったのです。
 
結果、どちらのエッセイも「いくつか不正確なところはあるが~」というフィードバックがあったので、やはりプルーフ・リーディングがある方がベターだとは思います。ただ、点数にはほとんど響いていないと個人的には思います。もちろん、どの程度ネイティブチェックが必要かは個人差があるので一概には言えませんが、これから英語圏の大学院に行かれる方は、自分のライティングスキルを考慮したうえで依頼するかどうか決めると良いかもしれません☆
 
【試み②】引用文献管理ソフトウェア「EndNote」を使ってみた。
 
→英語でエッセイを書くにあたって、分野によって守るべき文献引用スタイルがあるのですが(わたしの学部はAPA。ほかにはHarvardやChicagoなどがあります)、修士論文を執筆する際にかなりの文献を扱うことになるので、いちいち手打ちでレファレンス(参考文献リスト)を作るのは大変すぎる!と思い、文献の情報を入力すれば自動的に引用・文献リストを作ってくれるソフトウェアの操作に慣れておくため、今回の課題エッセイで活用してみました。
 
覚えるまでに少し時間はかかりましたが、このソフトウェアはものすごく便利!!レファレンスを一から作る手間が省けたので、使ってみて良かったです。ただ、2つ目のエッセイのフィードバックにもあったとおり、一部抜けがあったりと、EndNoteだけで100%完璧なリストが仕上がるわけではありません。やはり最終的には、自分の目で確認することが必要だということを痛感しました。修士論文では、ミスがないようにしよう!という良い教訓になりました。
 
今回の成績を受けて、あとは修士論文もこれまで通り(いやそれ以上!)の水準で執筆することができれば、わたしがひそかに目指しているMA with Distinction(「優」評価の修士号:全モジュール平均で70点以上)を狙える位置に立つことができました!
 
これまでユース・エンパワーメントに関わってきた中で、もっと勉強したいテーマを見つけ、それを学術的に研究するためにわざわざ日本での仕事を辞め、渡英し、修士課程で学び、集大成として修士論文を執筆する段階まで来ました。最後まで熱意を持って、楽しむ気持ちを忘れずに、やり抜きます!
 

【イギリス留学】12,000語の修士論文をどう組み立てるか?

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Photo from The KEEP-O-CALM MATIC
(このマウスパッド買おうかな?と思ったら£9.95もする!笑)

さて、Summer Term(夏学期)の英語の授業は全5回で、修士論文の構成の作り方を学びました。秋学期・春学期に比べると実用的な内容で、タメになって良かった^^

というわけで、学んだ内容を忘れないようにブログで整理・・・。

章立てとボリューム配分

わたしの学部 (Education)は、修士論文の語数は12,000 words(±10%)と決められており、この範囲を超えても下回っても点数を失うことになります。ボリュームとしては、学部論文と比べてもさほど多いわけではありません。限られた分量の中で、いかにクリアに主張を展開するか、ということが勝負となります。

大体の目安として、次のような構成です。各章の内容についてはのちほど!

・Abstract Topic, methods & results :2% (300 words)
・Chapter 1 Introduction:8% (1,000 words)
・Chapter 2 Context/literature review:23% (2,700 words)
・Chapter 3 Methodology:13% (1,500 words)
・Chapter 4 Results and analysis:25% (3,000 words)
・Chapter 5 Discussion:21% (2,500 words)
・Chapter 6 Conclusion :8% (1,000 words)

Abstract

Abstract(概要)は、修士論文全体の内容をコンパクトにまとめたもの。つまり、読者(主に採点する教授陣)が論文を読む前に大体の内容をつかめるものにしなければなりません。ここに含まれるものは、主に下記の項目。

・研究の目的と狙い
・メソッド(リサーチ及びその結果分析に用いる手段)
・研究のサマリー(要約)と主な成果
・研究結果の重要なポイント

1. Introduction

Introduction(イントロダクション:導入)には、次の内容が含まれます。

・研究分野、領域
・リサーチ・クエスチョン(研究において立てる問い)とその根拠、価値
・リサーチ・研究メソッドについての簡潔な説明
・論文全体の見通し、各章の簡単な内容説明

最初のAbstract(概要)も、論文全体の内容について大まかに示すという意味では同じですが、イントロダクションの章ではさらに、

・研究のバックグラウンド
・研究の正当性(なぜやる意味があるのか)
・論文全体の構成とアプローチ

を明らかにする必要があります。

イントロダクションは、他の章の内容が固まらないと書けないので、わたしが普段のエッセイ(レポート)を書く時には下書きだけしておいて、一番最後に書き直すようにしています。

2. Context/literature review

Literature Review(リテラチャー・レビュー:先行研究分析)に求められることは、主に2つ。

(1) 自分の研究分野の重要性を明らかにする
(2) 自分の研究が埋められるニッチな領域を示す

それぞれについて見ていきます。

(1)自分の研究分野の重要性を明らかにする
主な展開の仕方は2つ。

・社会でのニーズなどを鑑みて、その分野の重要性を強調する。
・学術界において、ハイレベルな研究がされてきた(つまり関心が高い)分野であることを強調する。

(2)自分の研究が埋められるニッチな領域を示す
(1)で重要な分野であることが示せても、すでに手垢がたくさん付いていることを研究しても学術的な意味がないので、「なぜ自分がそれを研究する必要があるのか?」を示さなければなりません。
そのために重要なのが、リテラチャー・レビュー。自分の研究分野に関連する先行研究文献を分析し、次のような手段で自分の研究の重要性を示します。

・先行研究における主張に対して、異論(Counter-claim)を唱える。
・先行研究の中にあるギャップ(不足している部分など)を示す。
・先行研究の内容に対して、疑問を投げかける。

たとえば、
・この分野においてAとBの観点では良く研究されているが、Cの観点はあまり強調されてこなかった。
・Dというテーマに対して、欧米のケーススタディは多いが日本については研究例が少ない。
といった具合です。

(1)と(2)をまとめると、先行研究を良く分析したうえで、その分野の重要性と、まだあまり研究されていない部分について示し、だからこそ自分がそれを研究する意味があるのだ、という主張を展開することが大切だということです。

最初に載せた各章のボリュームを見ると、Introduction & Literature Reviewが占める割合(合わせて31%)は、Results and analysis(自分のリサーチ結果と分析:25%)よりも大きく、とても重要な章だということがわかります。そのため、修士論文を書くにあたってはとにかく先行研究文献をたくさん読むことが必要になります。

3. Methodology

Methodology(研究手法)について書く章です。

・リサーチ・クエスチョンに対するアプローチ方法
・リサーチ対象者(もしいる場合)
・データを回収するメソッド(調査票、インタビュー等)と手順
・そのメソッドを選ぶ論理的根拠(Rationale)←重要!!
・メソッドを使ううえでの倫理的な配慮←これも重要!!
・データ回収・分析をするうえで、バイアスを回避し正確を期するための説明

英語のクラスを担当していたチューターは、これまで多くの修士論文の精査をしてきた経験から、「このメソッドを使います、という記述だけで、なぜそのメソッドが一番適しているのかという記述を欠いている学生が多いから、そこは注意してね」と言っていました。つまり、「何となく調査票配りま~す」というだけでは不十分で、「なぜ観察でもインタビューでもなく、調査票でデータを取るのか?」という根拠を示す必要があるということです。

4. Results and analysis

自分のリサーチのResults(結果)とAnalysis(分析)について書きます。
ここで重要なポイントは、

・Methodologyの章 (Chapter 3)の流れに沿って書く
(もし2つ以上のメソッドを使う場合は、それぞれの結果について分けて記述)
・リサーチ・クエスチョンに答える形で書く←重要!!

ということ。どんなにたくさんのデータが得られたとしても、自分が最初に立てたリサーチ・クエスチョンに沿って結果を示すという軸をブレさせないことが重要です。

また、このあとのDiscussion(ディスカッション)の章に繋げるため、リサーチの結果得られたデータをただ羅列するのではなく、特に興味深い観点にフォーカスすることも求められます。たとえば、

・データの中に見られる傾向やパターン(例:性別による特徴など)
・多くの人が選んだ項目、もしくはほとんど選ばれなかった項目
・データの統計的信頼度(データ分析でSPSSなどの解析ソフトを使う場合)
・その他、意外な結果など

当然のことながら、自分の仮説とは異なる結果が出たとしても、データを偽ることなく示さなければなりません。また、表やグラフを効果的に用いることも求められます。

5. Discussion

Discussion(ディスカッション)の章では、前章で示したリサーチ結果に基づいて、主に次の3つの観点から議論を展開します。

(1) 自分自身の研究について
・研究結果が、自分のリサーチ・クエスチョンに対してどの程度答えを提示したのか(もしくは答えが出なかった場合、その理由)←やっぱり重要!!
・得られたデータ同士の関連性や一貫性
・リサーチ・メソッドの評価

(2) 類似する他の研究も含めた広いコンテクスト
・先行研究結果との関連性
・先行研究と比較したときの類似点や相違点(ただし、サンプル数の違いなども考慮)

(3) 自分の研究領域における理論・実践との紐づけ
・自分の研究結果が、理論上持つインパクトや意味
・得られた研究結果をどのように一般化するか(もしくは限界があるか)
・自分の研究から導き出される教訓や今後求められるアクションの提示

前章同様、本文の内容と沿う形で効果的にグラフや表を挿入していきます。

6. Conclusion

そしてついにConclusion(結論)の章!主に次の質問に対する答えを述べていきます。

・どのように・どの程度自分の研究目的を達成することができたか?(ギャップや課題は?)
・自分の研究が意味するところとは?
・自分の研究の限界(リサーチしきれない部分)は?
・さらに研究が求められるところとは?(今後研究が必要な部分)

また、「結論」は単なる「まとめ」ではないため、リサーチ・メソッド、アプローチ、研究結果などについて自ら批判的に考察・評価することも必要です。

・・・と、ざっとまとめると修士論文の構成はこのようになります!
これを一つの目安として、わたしもこれから約3ヶ月、論文執筆を頑張ります^^

☆修士論文関連記事は、こちらのタグからまとめて読むことができます!

いよいよ今日が投票日!学生も盛り上がる5年ぶりのイギリス総選挙

 
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わたしが留学しているイギリスでは、今日投開票が行われる総選挙の話題で盛り上がっています!
 
日本と同じく、イギリスでも若年層の投票率の低さが問題視されていますが、少なくともわたしの周りでは、ロイヤルベイビー誕生のニュースよりも総選挙の方がはるかに高い関心を集めている印象。3~4月は、地元の候補者を大学に呼んだ、学生主催の討論会なども多く開催されていました。
 
総選挙自体が5年ぶりなので、今回初めて選挙権を得た、という学生も多いからかもしれません(現時点でのイギリスの選挙権年齢は18歳)。それと比べると、解散総選挙が頻繁に行われる日本は「投票できる!」という喜びが薄いのかも??
 
Facebookで「投票する宣言」をしたり・・・
 
facebook_voting
 
プロフィール写真を支持政党のアイコンに変えたり・・・
(そのあとコメント欄で学生同士の討論が始まるのがお決まり)
 
facebook_profile
 
わたしが所属する学生寮オフィスからは、「今日が投票日だからね!」と全員にメールが届きました。
(留学生であるわたしには、投票権はないのですが)
こういう、大学からの働きかけも若年層の政治意識に少なからず影響を与えるのかもしれないですね。投票所もキャンパス内に設置されているし。
 
email_election
 
ちなみに今日のGoogleロゴはこれです。
 
Google_logo
 
そうそう、ヨークの街では有名?な紫色のストリートパフォーマー「Purpleman」がいるのですが、みどりの党を支持する意思を表すため、いまは全身緑色らしい!(写真はこの記事から→Purpleman goes green as he makes a colourful statement on Stonegate
 
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以下、Facebook上で良くシェアされているものを中心に、選挙関連のリンクをいくつか貼っておきます。ご興味あればチェックしてみてください^^
 
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①How to vote at a polling station
(投票所での投票の流れ)
http://www.aboutmyvote.co.uk/how-do-i-vote/voting-in-person
 
②Who to vote at the General Election
(自分の考えに近い政党を知れるマッチングサイト)
https://voteforpolicies.org.uk/
 
③Where to vote tactically to get the prime minister you want
(二大政党がともに過半数を取れないと言われている中、連立政権を見据えたうえで「戦略的に」投票先を選びたい人のための候補者リスト)
http://www.theguardian.com/politics/ng-interactive/2015/may/05/election-2015-where-should-you-vote-tactically
 
④General Election timetable
(選挙期間中のタイムテーブル。投票は5月7日の朝7時〜夜10時)
http://www.parliament.uk/about/how/elections-and-voting/general/general-election-timetable-2015/
 
⑤General Election 2015 – BBC
(イギリスの放送局BBCの選挙特集ページ。速報もここで出るはず)
http://www.bbc.co.uk/news/election/2015
 
⑥Election Live – TV debate
(4月16日に行われた党首TV討論会の映像が観られます)
http://www.bbc.co.uk/news/live/election-2015-32137362
 
➆THE BRADY BLOG
(在英保育士、ライターのブレイディみかこさんのブログ。個人的に大好きで、フィード購読して勉強させていただいています!)
http://blog.livedoor.jp/mikako0607jp/
 
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個人的には、女性党首が率いる左派3党(スコットランド国民党(SNP)、ウェールズ党、みどりの党)の健闘ぶりに注目しています。教育政策のことを考えると、労働党による政権奪還を期待する部分もあるけれど、ミリバンド党首個人にはあまり惹かれなかったり・・・。党首TV討論会を観て、彼よりもSNPの二コラ・スタージョン氏のスマートさに惚れてしまいました!
 
実はわたし、修士論文のプレゼンを来週に控えているのですが、今夜はキャンパス内のバーで「Election Night」(選挙開票結果を観ながらお酒を飲む&語る、のだと思う、たぶん)が開催されるので、参加してこようと思います♪