├シティズンシップ教育

修士論文を提出しました!概要だけ載せておきます。

 
ついに!!!!!
 
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修士論文を提出してきました!!!!!
 
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一回目のデータ収集がうまく行かなかった時はヒヤヒヤしましたが・・・
何とか、提出期限(9月3日)よりも少し早めに提出することができました。
(わたしは何かと、最後の最後でヘマをやらかしがちなので、印刷後に万が一何かミスが見つかっても直せるように・・・と前倒しで終わらせました汗)
 
わたしの修士論文のテーマは、
“The Perceived Influence of Service-Learning on The Citizenship-Related Attitudes of Japanese Undergraduate Students”
 
意訳すると、「サービスラーニングがシティズンシップ関連の態度に対して与える影響について、日本の大学生がどう認識しているか」というものです^^
 
☆サービスラーニングとは、簡単に言ってしまうと「学校での授業(知識)」+「社会奉仕活動(経験)」+「リフレクション(振り返り)」がセットになった教育プログラム。日本では1990年代後半から徐々に導入する大学が増えてきましたが、まだ発展途上。
【参考記事】日本の大学教育改革と「サービスラーニング」導入状況
 
論文の頭(イントロダクションの前)に書いた、300語程度の概要(Abstarct)を英・日両方で載せておきます。実際の論文は13,000語ぐらいありますが「あ~、こういうこと論文に書いてたのね~」と何となく伝われば・・・!
 
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The main aim of this study is to explore the perceptions of Japanese undergraduate students regarding the influence of a university’s service-learning programme on their citizenship-related attitudes, such as their personal development, their personal interest and responsibility, and their behavioural willingness to participate in philanthropic and political activities.

 
(この研究の目的は、大学のサービスラーニング・プログラムがシティズンシップ関連の態度、たとえば自己成長や興味関心、責任感、慈善的または政治的行動への意欲などに与える影響について、日本の大学生の認識を調査することである。)
 

This dissertation explores the two main traditions of education for democratic active citizenship, English citizenship education and American service-learning, and presents a common critique for both approaches about the lack of political literacy aspects.

 
(この論文は、民主主義的アクティブ・シティズンシップのための教育における2つの主な様式である、イングランドのシティズンシップ教育とアメリカのサービスラーニングについてまず探り、次いで政治的リテラシーという観点の欠如という、両アプローチに対する共通の批判について示す。)
 

There has been a recent increase in attention to educational approaches regarding social participation in Japan and some universities have introduced service-learning programmes. Whilst some previous studies in the US have reported that service-learning can have a positive influence on the participants’ personal development, there are only a few studies regarding its influence on their philanthropic and political participation.

 
(日本では近年、社会参加を促す教育的アプローチに対する注目が高まっており、いくつかの大学ではサービスラーニングを導入している。過去のアメリカでの研究では、サービスラーニングは参加者の自己成長に対してポジティブな影響を与える、ということが報告されてきたが、彼らの慈善的または政治的参加への影響についての研究は、数が多くない。)
 

The main research question in this study is: How do Japanese undergraduates perceive the influence of service-learning on their attitudes after participating in the programme? The study focuses on a Japanese private university and the perception of undergraduate students who experienced service-learning in the last two years. Thirty-three students completed a questionnaire and five of these students were subsequently interviewed.

 
(この研究のリサーチ・クエスチョンは、「日本の大学生たちは、サービスラーニングが彼らの態度に与えた影響について、プログラム参加終了後にどのように認識しているか?」。ここでは日本のとある私立大学で、過去2年間にサービスラーニングを経験した学部生の認識に焦点を当てる。33名の学生が質問票に、うち5名がその後のインタビューに回答した。)
 

The findings indicate a low perceived influence of service-learning on the participants’ confidence in making a difference in society. Many students do, however, express a willingness to help others in difficulty, but their willingness to engage in political action is low.

 
(得られた結果が示すのは、参加者の認識として、「社会に変化を起こすことができる」という自信に対してサービスラーニング経験が与えた影響が小さかったということである。また、多くの参加者が「今後、困っている人を助ける」ことについての意欲を示したのに対して、「政治的行動に参加する(日本語補足:選挙での投票、政治的リーダーへの意思表明、デモへの参加など)」意欲は低かった。)
 

This dissertation argues that service-learning programmes can be successful in raising participants’ awareness of their interest in community issues to some extent, but it might not be enough to empower them to take action based on social justice activism. This dissertation suggests that well-structured reflection to understand the root causes of community issues and constructive dialogue and deliberation on controversial issues are required.

 
(この論文が主張するのは、サービスラーニング・プログラムは、地域が抱える課題に対する参加者たちの関心はある程度高めることに寄与できるが、彼らが社会正義の理念をベースに行動を起こすよう力づけるには不十分かもしれない、ということである。したがってこの論文は、地域の課題の根本的な原因について理解するための良く構成されたリフレクションと、物議をかもすような問題について建設的に対話・討議する場の必要性を提案する。)
 
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こんな感じです(かなりざっくりですが)。
 
自分のリサーチはあくまでもケーススタディで、論文に占める比重は、過去の文献研究(Literature Review)が大きいです。これまで行われてきた研究の中にあるギャップを自分なりに分析し、それを埋めるためのリサーチ・クエスチョンを立てて→結果をもとに議論を展開する、という流れです。
 
帰国後、報告会なり何かしら還元できる場があれば・・・と思いつつ、そこまで手が回るかちょっと不明なので、便乗できそうな機会があればお声掛けください(笑)。
 
ちなみに、現時点では修士論文を「提出した」というだけで、フィードバックがもらえるのは帰国後の10月、修士号取得の最終審査結果が出るのは11月の予定です。
 
☆そのほか、修士論文に関する過去の記事は「#修士論文」のタグでまとめてあるので、ご興味のある方はそちらからどうぞ~。
 

【DEAR連載⑤】シティズンシップ教育の実践に求められるファシリテーション能力(2015年6月号)

 
DEAR(開発教育協会)の会報誌「DEARニュース」で、隔月の連載記事を持たせていただいています。
タイトルは、【ヨーク大学院留学記〜イギリスに学ぶ地球市民教育〜】。
本来、DEAR会員限定の出版物なのですが、発行後に許可を得たうえでこのブログでも寄稿記事をご紹介します。
今回でいよいよ最終回です^^
 
☆これまでの連載記事は、「DEAR連載」のタグからまとめて読めます。
 
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■第5回 シティズンシップ教育の実践に求められるファシリテーション能力
 
シティズンシップ教育は、子ども・若者たちが現代社会について理解し、積極的に社会参加するための知識とスキルを身に付けることを目的としています。それを教育現場において実践するうえで避けて通れないのが、物議をかもす/論争を招くイシュー(Controversial issues)です。
 
平たく言えば、善悪の判断をつけるのが難しく、賛否両論生まれやすいセンシティブな問題。たとえば、ジェンダー、文化、宗教、政治にまつわるイシューの多くは個人の価値観や信条の差異によって意見の相違が生まれることが多く、取扱いが難しいと感じる人も多いかもしれません。しかし、シティズンシップ教育では、子どもたちがこうした問題について異なる価値観を持つ他者と話し合い、クリティカルシンキング・スキルを身に付けることが望ましいとされています。
 
polling station
[写真]イギリスでは今年、5年ぶりの総選挙が行われました。授業でも政治の話題が良く挙がり、自分が支持している政党を公言する講師陣も多かったです。写真のように、大学のキャンパス内に投票所が設置されていたことで、選挙を身近に感じた学生もいたのでは?
 
「価値観」に関する教育というのは、一方通行の授業だと「刷り込み」「押しつけ」になってしまいかねません。そこで、今後ますます教育者に求められるのは、「ファシリテーション能力」、つまり、子どもたちが話し合いを通じて相互理解・合意形成できるように導くスキルだとわたしは考えています。
 
わたしがインターンをしているグローバル教育センターでは、学校教師向けのファシリテーション研修の中で①まずは教師自身のスタンスを述べずに、子どもたちに問題の背景を説明する、②子どもたちに互いの意見を尊重し合いながら議論させる、③考えうる全ての視点が出そろったあとで、教師自身の考えとその理由も話してよい、ということを伝えています。たとえ教師であっても、完全に「中立」である必要はなく、むしろ「あらゆる視点を考慮したうえで自分の意見を形成する」手本となることを重要視しているのです。
 
子どもたちが互いの意見を尊重し合いながら議論するプロセスを通じて、自分自身の価値観が「絶対」ではないということや、善悪のボーダーラインを引くことの難しさ、異なる意見を持つ他者との折り合いの付け方について学べる場づくりが、今後ますます教育現場において必要になってくるでしょう。
 
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★DEAR(開発教育協会)入会のご案内はこちらのページから。
 

ICEDC学会レポート「多文化環境における教育:人権のための闘い」

 
イギリスの大学院に留学してからはじめて、学会に出席してきました!
と言っても、わたしはプレゼン発表をしたわけではなく、聴講のみです。
(いつか、PhD(博士課程)に進む日が来たら、こういう場で発表できるようなリサーチがしたい!)
 
ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(University College London, UCL)のロンドン大学教育研究所(Institute of Education, IOE)中にある、International Centre for Education and Democratic Citizenship (ICEDC)が毎年開催している学会で、主催者はProf Audrey OslerとProf Hugh Starkey。わたしは研究者向けのSNS「Acacdemia.edu」でAudreyをフォローしていたので、この学会のことを知ることができました。
 
第9回目となる今回のテーマは、
Education in Multicultural Settings: the Struggle for Human Rights
(多文化環境における教育:人権への闘い)
でした。
 
わたしが強い関心を持ってヨークで研究しているグローバル教育・シティズンシップ教育・人権教育のトピックに強い関連があり、ぜひ参加したいと思ったため、朝5:30に起きてはるばるロンドンへ!ヨークからロンドン(キングスクロス駅)までは、電車で2時間ほど。
 
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学会では、10名以上の発表者(教授やPhDの学生など)によるプレゼン(各15分程度)を聞きました。かなりのボリュームなので、それぞれのポイントをかいつまんで日本語でもまとめておきます。
 
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■(基調セッション)Dr Samia Bano (Senior Lecturer in Law, Centre of Isalamic and Middle Eastern Law (CIMEL), SOAS, University of London)
テーマ:多文化社会イギリスにおけるムスリム女性の経験
 
・現在起こっている議論:インフォーマルな宗教法システム/多文化主義/ジェンダー差別
例)学校でヴェールを脱ぐ権利、職場でジルバブを着用する権利など
・シャリア(イスラム法)を守りつつも、どの程度ムリスム女性が自らを自由に表現できるか?
・2011年Family Justice Review:パブリック・スペース(子どもの保護など)に関する法制度の改革の必要性と、プライベート・スペース(離婚など)における手続きの簡素化(仲介など)について言及。
・研究命題①:家族、コミュニティにまつわる複雑性(家族法周辺の課題)
(宗教的コミュニティの仕組みは、政府の公的介入をほとんど受けずに「プライベートな」ものとして運営されていくべきか?)
・研究命題②:「公的システム」VS.「宗教的コミュニティ」
(行政的な離婚手続きだけでなく、The Muslim Law Shariah Council UKに「離婚証明書」の発行を申請するムスリム女性たち→宗教的コミュニティへの帰属意識・アイデンティティが強い)
 
 
Kerim Sen (UCL IOE PhD)
テーマ:トルコにおける過去20年間のシティズンシップ教育改革の変遷
 
・世俗主義的ナショナリズム:教育カリキュラムは、政府のイデオロギーを伝える手段として捉えられてきた。
・カリキュラム改革①(1997~2012年):非軍事化(demilitarisation)
・カリキュラム改革②(2012年~):イスラム教化(Islamisation)→シティズンシップ・民主主義的教育の削除→宗教的ナショナリズムへ
・シティズンシップ教育のカリキュラムとしての不安定さが露呈されている。
 
 
Adem Ince (University of Leeds, PhD)
テーマ:トルコにおけるシティズンシップ教育が民族的マイノリティグループに与える影響
 
・既存の教育カリキュラムはナショナリズムによって支配されており、ケマリズム(アタトゥルク主義)と同一視されている。
・教科書では”Turkishness”(トルコ人らしさ)が賞賛され、そのことがマイノリティグループの排除に繋がっている。
・国民の44%がマイノリティグループを「あまり信用していない」、29%が「全く信用していない」という調査結果も。
・今後の研究では、シティズンシップ教育政策と実践が特にクルド(Kurds)の人々に与える影響に焦点を当てる。
 
 
Dr Yuka Kitayama (Buskerud and Vestfold University College, Norway)
テーマ:ダイバーシティ、シティズンシップ、そして日本における極右派の隆盛
※北山夕華博士はわたしと同じヨーク大学のMA卒業生で、平成25年度から日本学術振興会の海外特別研究員として「ノルウェーにおけるシティズンシップ教育と社会的包摂」について研究されています→HBV welcomes researcher from Japan – hbv.no
 
・背景:戦後、愛国主義的な表現がセンシティブな問題に/移民の増加(外国籍人口は全体の2%)/民族的マイノリティは500万人(全人口の3.3-4.8%)というデータも。
・2011年時点で登録されている外国籍人口:中国(32.5%)韓国(26.2%)ブラジル(10.1%)フィリピン(10.1%)→日本語話者含む。
・政治におけるナショナリズム:人気のある右派政治家(石原慎太郎氏など)、中国や韓国との領土問題、歴史教科書問題(90年代~)、2006年の教育基本法改正(愛国主義的)、道徳教育をめぐる論争、君が代・日の丸問題など。
・インターネットの発達により、右派ムーブメントが一般市民にとってもアクセスが容易に。
・外国人嫌悪、特に韓国人に向けたヘイトスピーチ:民族的マイノリティの学校が人種差別主義デモの標的に。また、子ども自身が右派デモに参加することも。
・学校教師、言語アシスタントなどへのインタビュー:教師同士での偏見(民族的マイノリティ出身の教師やPTAメンバーの不足)、マスメディアや両親からの影響(「韓国人とは仲良くなるな」等)
・偏見や差別をなくすための個人的な努力だけではなく、組織的な取り組み・法的枠組みでの検討も必要。
 
 
■(基調セッション)Prof Gus John (Chair of the Communities Empowerment Network and associate professor of education at the UCL Institute of Education, London)
テーマ:インクルーシブ教育の推進、学校と子どもの権利の視点から
 
・「全員いっしょ(The one-size-fits-all)」の学校システムは、特にアフリカの伝統的コミュニティにおいて、社会的排除を促進している。学校という場が市場主導になってきており、労働市場で使えるスキルを身に付けさせ、「適応できるものだけが生き残れる」場になってしまっている(つまり、「排除」は管理のために不可欠なものとみなされている)。
・学校システムから排除されてしまう子どもたちの多くは、Special Educational Needs(SEN:特別な教育的ニーズ)を抱えている。
・2010年に平等法(Equality Act 2010)が成立したが、現状としていまだに適切な支援を受けられていない子どもたちは多い。子どもの権利という視点から、学校システムの在り方を問い直すべきである。
 
 
Sneh Aurora (Amnesty International)
テーマ:人権フレンドリースクールの取り組み:学校全体で平等、インクルージョン、ダイバーシティを推進するアプローチ
 
・アムネスティ・インターナショナルでは、Human Rights Friendly Schools(人権フレンドリースクール、以下HRFスクールと表記)というプロジェクトを実施している。学校生活を通して人権尊重の理念を体現するため、学校コミュニティの全てのメンバーの積極的な参加を促すための取り組み。現在世界20ヶ国以上で展開中(アジアではモンゴル、インド、韓国で実践例がある)。
・キーワード:差別をしない、インクルージョン、参加、説明責任、カリキュラムや教育メソッドを通したエンパワーメント
・生徒だけでなく、学校コミュニティのメンバー(教師や他のスタッフ含む)全体をエンパワーメントする。また、机の並び方やトイレ環境など、学校の生活環境を通して平等や尊厳が守られるようにする。
・ただし、HRFスクールとして認められるための「基準」をクリアしなければならない、というものではなく「ガイド」に基づいてプロジェクトを推進していく学校を増やしていこうという趣旨。
・実践例①アイルランド:全生徒数の10%が移民の子どもたちという学校において、さまざまな言語で書かれたあいさつを玄関や廊下に飾るなど、民族的アイデンティティにとらわれないインクルーシブな環境づくりを推進。その結果、人種などの違いだけでなく他のマイノリティ(LGBTなど)への生徒への関心・理解も高まってきている。
・実践例②ハンガリー:ロマのコミュニティにおける学校で、教師、生徒共に自信の欠如が課題となっていた。地域のNGOと協働してHRFスクールとしてのプログラムを推進していったことで自己肯定感が高まり、学習成果も改善されてきている。
 
 
Mai Abu Moghli (UCL IOE, PhD)
テーマ:パレスチナ自治政府が運営する西岸地域の学校における人権教育
 
・西岸地域、ガザ地区両方において、公民教育のカリキュラムの中で人権教育が謳われている。
・公民の教科書では人権について多く述べられているものの、実際の内容については、複雑な社会状況を鑑みて注意して見る必要がある。
・たとえば、学校運営が外国からの援助に頼っているため、援助機関の望むアジェンダ(平和構築プロセスにおける非政治化など)と相反する内容は盛り込めない。
・教育省の新しい戦略(2014-19年)では人権教育(ジェンダー平等など)に重きを置くとされているが、実際はナショナリズム的な内容になっている。たとえば人権そのものよりも、それを得るための国民としての義務の方が強調されており、自由を追求するための闘争については言及されていない。
・今後の研究では、西岸地区の5つの学校に焦点を当て、パレスチナ自治政府統治下での人権教育の内容を形成する要因や、教師・生徒の感じ方、どの程度生徒の社会参加につながっているかを分析する。
 
 
Dr. Ioanna Noula (University of Thessaly, Greece)
テーマ:「二分化」するシティズンシップ:新自由主義時代におけるギリシャの小学校でのアプローチ
 
・小学校6年生のクラスでの観察、インタビューを通して、教室で実践されている教育アプローチと、生徒たちがどのようにシティズンシップを捉えているかを研究。
・ギリシャでは経済危機、移民や亡命者の増加などによるパラダイム・シフトが起こっている。国民の経済的不安から外国人嫌悪や人種差別といった動きが顕著になってきている。
・教育現場においても、生徒をエンパワーメントするための教師のモチベーションが低下傾向にある。
・リサーチ成果:大学入試のプレッシャー(とそれに伴う保護者の期待)が、教師の教育アプローチの選択に影響を与えている。また、小学校・中学校においては、教科の階級化(成績評価のある教科は重要視されるが、それ以外は軽視される)が見られる。その結果として、教師は生徒と対話を通じた関係性を築き、社会参加に向けて力づけることに消極的になっている。
・二分化:ギリシャ市民vs.移民や難民、ギリシャ市民vs.政府
・競争原理が優先されることで、生徒の社会疎外が懸念される。
 
 
Hein Lindquist and Prof Audrey Osler (Buskerud and Vestfold University College, Norway)
テーマ:ノルウェーのシティズンシップとダイバーシティ
 
・ノルウェーには、大きく分けて3つの民族的マイノリティが暮らしている:(1)先住民族(Sami)、(2)ナショナル・マイノリティ(Roma, Jews, Tatarなど)、(3)移民。
・ノルウェー語の習得は個人の努力に委ねられており、非ネイティヴスピーカーの社会排除に繋がっている。
・また近年のテロ攻撃の増加(パリ、コペンハーゲンなど)により、先に挙げたマイノリティグループに対するヘイトスピーチや、法規制の厳重化の傾向が見られる。→このような課題に対して、学校や幼稚園はどのような教育を実践していくべきか?
・ノルウェーとデンマークの中学校を対象にしたAttitudes to Human Rights and Diversity in Education(ATHURDE)プロジェクトの調査結果:クラスルーム・マネジメントと、教師のサポートが、生徒の幸福度、モチベーションに大きく影響する。
・ダイバーシティ、人権を尊重する文化を構築することが学校教育でも求められる。
 
 
Prof Nilda Stecanela (University of Caxias do SUl, Brazil)
テーマ:ブラジルの義務教育:教育へのアクセス、学習、対話をめぐる権利
 
・ブラジルの義務教育期間の変遷:4年(1971-)→8年(1996-)→9年(2006-)→14年(4-17歳:2013年-)
・就学年齢に達している子どものうち約95%が学校教育にアクセスする権利を保障されている。しかし、学習に対するモチベーションや関心が低い子どもも少なくないこと、学校教育と家庭教育の境界線が曖昧であることなどから、「教育にアクセスする権利」と「義務教育を受けなければいけない不快感」のジレンマが生まれている。
・教育にアクセスする権利だけでなく、学習することに対して子どもたちの意見を聞くこと、支配者(教師)と被抑圧者(生徒)の二分的な構造ではなく互いに尊重し合う関係を構築すること(パウロ・フレイレが論じた「対話」)、コミュニケーションを仲介するのは文化であることを理解すべきである。
 
 
■(総括パネルセッション)Prof Audrey Osler, Prof Gus John and Prof Hugh Starkey
 
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・共通の傾向:新自由主義(ネオリベラリズム)の台頭、不明瞭な政策議題、異なる出自を持つ生徒たち。
・イギリスでは今、SMSC(spiritual, moral, social and cultural development:精神的、道徳的、社会的、文化的発達)の授業を通して「イギリス人の価値観(British Values)」を教えることが義務づけられているが(参考記事:「イギリス人の価値観」を学校でどう教えるか?【前編】)、ベースにあるべきは人権尊重の姿勢である。
・しかし、人権のフレームワークだけでは不十分。政府に対して抵抗・挑戦し、社会正義を達成するための手段として法律を用いることが必要であり、学術界はそうした状況に挑戦し続ける場所であるべきである。
ポストコロニアル理論と人権尊重の姿勢を持ち合わせること。そのアプローチはもちろん課題もあるが、社会的にのけ者にされがちなマイノリティグループの視点を意識するという意味で重要。
・問い:認識的(cognitive)、情緒的(affective)、能動的(active)な側面から若年層を支援するにはどうすればよいか?
 
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以上、箇条書きですが学会レポートでした。
シティズンシップという概念は、時代や国など文脈によって常に変化していくものであり、ローカルの現実とグローバルな課題の両方を注視していくべきであるということを、世界各国(イギリス、日本、トルコ、パレスチナ、ギリシャ、ブラジルなど)の研究発表から実感することができました。
 
日本の教育において「人権尊重」と言うと、「途上国の子どもが・・・」「いま紛争が起きている地域では・・・」と海外の問題にばかり目が向いてしまう傾向があり、国内におけるシティズンシップ、人権をめぐる課題が軽視されているように感じます。
テロの脅威や経済危機など世界情勢が不安定になり、ナショナリズム的な思想が各国で隆盛する中、いわゆるマイノリティグループ(人種、ジャンダー、障がいなど)の社会的包摂は、共通のグローバル課題と言えます。若年層の社会参加という文脈において、そもそも参加が阻まれている層(外国にルーツを持つ子どもたちなど)をどうサポートし、また政策提言していくのか、というテーマについて、今後も考えていきたいと思います。
 

欧州評議会・南北センターのオンラインコース奨学生に選ばれました

 
先日の記事にも書いたとおり、ヨーク大学修士課程の授業はすべて修了したのですが、欧州評議会・南北センター(the North-South Centre of the Council of Europe)とネットワーク大学 (The Network University:アムステルダム大学をルーツに持つ、協働学習(Collaborative learning:コラボレーティブ・ラーニング)センター)が提供する短期オンラインコース(1ヶ月間)を受講できることになりました!全額奨学金付きなので、なんと無料で受けられます・・・ありがたや!
 
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Image from North-South Centre
 
Global Education: The Citizenship Dimensionというタイトルで、「グローバル教育をシティズンシップの視点から考える」という、まさにわたしの問題意識・研究関心に合致しているコース。募集締め切り1週間前に、他学部の友人が「これMioの興味に近いんじゃない?!」と紹介してくれ、(修士論文の執筆と並行して受講するのは大変すぎるかな・・・)という迷いも少しありつつも、「全額奨学金がもらえたらぜひ勉強したい!!」と勢いで応募書類を書き上げたので、念願叶って奨学生に選ばれ、本当にうれしいです。
 
最低でも週10時間、このコースを受ける必要があり、個人でのオンライン学習のほかにペアワークやグループワーク、それに基づいた課題提出も求められるので、午前中はコース受講、午後は修士論文の執筆、というスケジュールで進めていくつもりです。
 
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■参加者
参加者リストによると、下記の国から44名が受講するようです。
 
・アフリカ(モロッコ、トーゴ、チュニジア、コートジボワール、ガーナ、コンゴ、シエラレオネ、アンゴラ)
・ヨーロッパ(アイルランド、ギリシャ、リトアニア、ルーマニア、イタリア、フランス、キプロス、ノルウェー、ラトヴィア、チェコ、ハンガリー、ポーランド、クロアチア、スペイン、フィンランド、ポルトガル、ドイツ、スロヴェニア、セルビア)
・中南米(アメリカ、コスタリカ、メキシコ)
・ロシア
・日本(わたしのみ)
 
■コースの目的
グローバル化する世界において、社会正義(social justice)と持続可能性(sustainability)に向けた変革に向けて、民主主義的シティズンシップ(democratic citizenship)に関連する問題に取り組んでいる人向けのコース。主な目的は下記のとおり。
 
・シティズンシップの省察、協働デザイン、ローカル/グローバルなアクションのための協働的なスペースの提供。
・シティズンシップ、市民参加(civic engagement)、グローバル教育の文脈における参加に関連する既存概念の再考察。
・グローバル化する世界における、シティズンシップ教育に対する既存の政策アプローチへの疑問提示。
・シティズンシップに対する新しいアプローチの創造と、それに付随する課題をスケールアップするための省察。
・社会正義と持続可能性につながる、インパクトのあるシティズンシップを文脈に応じて発展させるため、必要とされる能力(competences)と可能な道筋の認識。
・考える人、実践する人、イノベーター、その他の関連するアクターを繋げること。
・インパクトを増大させるためのメカニズムへのサポート強化。
 
■カリキュラム内容
4週間にわたって開講されるコースで、毎週異なるモジュール・課題を修了する必要があります。
 
・Module 1: Exploring Democratic Citizenship in a Globalised World
(モジュール1:グローバル化する世界における民主主義的シティズンシップの探究)
 
・Module 2: Co-Design of Impactful Democratic Citizenship Action
(モジュール2:インパクトのある民主主義的シティズンシップ・アクションの協働デザイン)
 
・Module 3: Competences and Strategic Paths for Transformative Citizenship Action
(モジュール3:変革のためのシティズンシップ・アクションに向けた能力と戦略的道筋)
 
・Module 4: Support Structures and Tools for Collaboration for Follow-Up
(モジュール4:フォローアップのための協働に向けた構造とツールのサポート)
 
個人で提出する課題もあれば、同じコースの参加者の中からパートナーを見つけ(Facebookの限定グループなどで呼びかけ)、共同作業を求められるものもあります。
 
わたしはいま、モジュール1に取り組んでいるところなのですが、「シティズンシップをめぐるジレンマ」について考える課題で、ラトヴィア出身の女性に声を掛け、オンライン上で意見交換しています。もともとわたしは、「ラトヴィアの人口の10%を無国籍者やノン・シティズン(non-citizens)が占める」という状況に関心を持っており、そうした国出身の彼女ならではの意見を聞きたい、と期待したためです。また、お互いにノン・フォーマルな教育の分野での職務経験があり、市民参加を促進するためのエンパワーメントについても問題意識が近いため、初っ端から刺激を受けています!
 
■そのほかの特徴
・(前述のとおり)個別学習だけでなく、オンラインでの相互アクションが求められる。
・プラットフォーム上に「フォーラム」というページがあり、コースに関連するトピックについて意見交換できる。
・学習内容に対して質問があるときや課題を提出した際には、チューターが速やかに返答してくれる。
・トップダウンのコースではなく、受講者から運営スタッフにフィードバックや改善提案を出せる。
・コース修了後も、マイページにログインすれば提供資料などを閲覧することができる。
 
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・・・と、このようなコースになっています。修士論文と並行しての受講は、時間的制約があり、簡単ではありませんが、自分の研究内容に強く関連するテーマですし、何よりこれまで取り組んできた修士課程の勉強がベースにあるからこそ深められる内容だと感じています。
 
複数のNGOでファシリテーターとしていわゆるグローバル教育に携わってきて、
ヨーク大学の修士課程でシティズンシップ教育を学んできたいま、
「その双方を合わせて考えたときに避けられないジレンマについて研究し、今後必要とされるプログラムを考えていきたい」と新たな問題意識が芽生えたタイミングで出会えたコース。
 
自分の視点に固執するのではなく、さまざまなバックグラウンドを持つ他の参加者との相互アクションを通して、「多文化共生社会における市民参加・シティズンシップ教育」という自分のテーマについてさらに深く学びたいと思います!がんばるぞ~^^
 

【JID連載③】アイルランド、国民投票で同性婚合法に~若年層向けキャンペーンから学ぶこと~(2015/5/24)

 
「”ニュースの深層”を徹底解説」するウェブメディア、Japan In-Depth(ジャパン・インデプス)にて連載記事を持たせていただいています。【齋藤実央のシティズンシップ論考】というタイトルで、ヨーロッパが抱える移民などの問題について、わたしが研究している市民権(シティズンシップ)の観点から考察していきます。
(ブログへの転載許可をいただいています^^)
 
☆これまでの連載記事は「Japan In-depth連載」のタグからまとめて読めます!
 
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[齋藤実央]【アイルランド、国民投票で同性婚合法に】~若年層向けキャンペーンから学ぶこと~
投稿日:2015/5/24
記事リンク:http://japan-indepth.jp/?p=18460
※誤解を招く表現があったため、内容を一部訂正させていただきました。
 
今月22日、アイルランドで、同性婚の解禁に向けた憲法改正の是非を問う国民投票が行われた。結果として、賛成票(約62%)が反対票(約38%)を上回り、アイルランドは「多数決」により同性婚が認められた世界で最初の国となった。同国では、2011年から、同性カップルに結婚とほぼ同等の社会的権利・責任を付与するシビル・パートナーシップ制度が導入されていたが、今回の国民投票の結果により、同性同士の結婚そのものが認められる。
 
なお英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)では、すでにイングランドとウェールズ(2013年)、そしてスコットランド(2014年)でのみ、同性カップルに結婚の権利を認める法案が可決されている。
 
さて、日本では先日の「大阪都構想」をめぐる住民投票結果を受けて、「シルバーデモクラシー」、つまり少子高齢化社会において、若年層よりも高齢層の意見の方が色濃く政治に反映される状況を指摘する声が上がっていた。今回アイルランドで行われた国民投票は、世代別の投票率がまだ発表されていない(全体の投票率は約61%だった)ものの、同世代に投票を促す若年層有権者による働きかけは、日本でも参考になる部分があるかもしれない。ここでは、BeLonG Toというユースグループが中心となって展開したキャンペーンについて簡単に共有したい。
 
BeLonG Toは、LGBT(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー)を自称するアイルランドの若者のための組織だ。今回の国民投票で、同性婚解禁に向けて「YES」(憲法改正に賛成)と投票するよう、”BeLonG To YES”というキャンペーンを通じて若年層に働きかけた。
 
このキャンペーンには、National Youth Council of Ireland(以下NYCI)をはじめ、子どもの権利や若者の社会参加促進などをミッションとするアイルランド国内の14のユースグループが賛同。同キャンペーンの一環で電子リーフレットや動画が作成され、「今回の国民投票がアイルランドの歴史にとって重要な理由」、そして「結婚の平等がLGBTの若者にとってもそうでない人にとっても大切である理由」をシンプルな言葉で伝え、若年層(メインターゲットは18~25歳)のみならず彼らの親世代に対しても広く同性婚への理解を求めた。
 

Photo from #BeLonGToYES – BeLonGTo Professional
 
また、NYICのウェブサイトでは、これまで選挙で投票経験のない若者のために「投票所に着いてからの簡単な6ステップ」という記事が公開された。アイリッシュ・タイムズの取材に対し、NYICの副代表である学生は次のようにコメントしている。「この国民投票は、アイルランド全土の若者に対して、彼らが平等に価値を認められているという強いメッセージを届け、他者への敬意を高め、ホモフォビア(同性愛嫌悪)を減らす機会だ」。賛成票が過半数を上回るという結果を受けて、当キャンペーンの賛同団体はそれぞれに喜びの声を上げている。
 
今回のアイルランドにおける若年層有権者向けのキャンペーンから学べるのは、まずは投票行為自体のハードルを下げること、また投票結果が自分たちの将来にどのような影響与えるのかを明確に伝えること、そしてそのために、若年層にリーチできるネットワークを持ったユースグループが互いに連携し、統一されたメッセージをシンプルに拡散する重要性だと言えよう。世代間の対話を促しながら、「自分たちの手で社会に良い変化をもたらしたい」というポジティブなうねりを生み出すことが、シルバーデモクラシーを打ち破る一つの鍵なのではないだろうか。
 

【JID連載②】欧州の「インクルーシブ」教育とは~移民受け入れに備える日本が学べること(2015/5/3)

 
「”ニュースの深層”を徹底解説」するウェブメディア、Japan In-Depth(ジャパン・インデプス)にて連載記事を持たせていただいています。【齋藤実央のシティズンシップ論考】というタイトルで、ヨーロッパが抱える移民などの問題について、わたしが研究している市民権(シティズンシップ)の観点から考察していきます。
(ブログへの転載許可をいただいています^^)
 
☆これまでの連載記事
【第1回】欧州で移民排斥の極右政党台頭~テロと経済状況悪化が背景に~(2015/3/26)
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[齋藤実央]【欧州の「インクルーシブ」教育とは】~移民受け入れに備える日本が学べること
投稿日:2015/5/3
記事リンク:http://japan-indepth.jp/?p=17898
 
移民の増加により、民族的、文化的多様性が増している欧州では、「統合(Integration)」がますます大きな共通課題となっている。しかし、各国の教育政策に目を向けてみると、その実践方法は様々だ。親の出身国で生まれ育ったのち、移民として新しく第三国で暮らすことになった子どもたちは、学校の授業に付いていけず、疎外感を抱くケースも多い。その大きな要因の一つが、言語の壁だ。本記事では、フランスとイギリスの学校教育における言語的マイノリティの生徒へのアプローチを比較してみたい。
フランスでは、「市民(シティズンシップ)」の概念は必ずしも人種や出生時の国籍と同義ではなく、移民の親のもとに同国で生まれた子どもでも、18歳になった時点でほぼ自動的にフランスの市民として認められることになる。その代り、「フランス共和国の原則の尊重」が義務とされており、政府はフランス語の十分な運用能力も重要な条件の一つとして強調している。
 
学校教育において、フランス語を十分に話せない移民の生徒は特別クラスに分けられ(日本でも今年公開されたフランス映画「バベルの学校」に出てくる「適応クラス」がその例だ)、そこで約1年間フランス語を身に付けてから通常クラスに移る仕組みになっている。
 
この方法は、子どもたちの民族的、文化的アイデンティティを保持できるという面がある一方、通常クラスの生徒とは「分離」されてしまうことで「よそ者」だと自覚せざるを得ないというデメリットもある。また、特別クラスには非ネイティブ・スピーカーの生徒が集められることから、ネイティブ・スピーカーである生徒たちとの実践的なコミュニケーション機会に欠けるうえ、生徒同士の良好な関係を築きにくいという指摘もある。
 
一方イギリスは、いわゆる「不文憲法」国家であり、「市民」の法律上の概念は複雑かつ曖昧だ。2002年に制定された「国籍、移民及び庇護法」によると、「イギリスに関する知識と言語能力」が新しく市民となるうえでの義務として挙げられている。
 
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[写真] 筆者が訪れたイギリスの公立小学校。クラスの半数が、中東やアフリカなど他国から移住してきた生徒。
 
過去のシティズンシップ政策においても言語能力の重要性が強調されているものの、学校教育を通じた公的サポートについては触れられていない。事実、移民の子どもたちのための特別クラスは基本的に設けられていないため、移民の子どもたちも通常クラスで授業を受け、平日の夜や週末にチャリティ団体によって開かれる「補修学校」などで言語のハンデを埋めるというケースがほとんどだ。
 
フランスのケースと比較すると、他の生徒たちと「分離」こそされていないものの、十分に英語を理解できないまま「物理的統合」をされているにすぎないため、授業を理解できず学習に遅れを取り、結果的に社会的排除に繋がるリスクを孕んでいる。
 
このように、移民の子どもたちへのサポートは、言語教育ひとつを例に取っても課題が多いものの、効果が期待される実践例もいくつかある。たとえば、比較的移民受け入れの歴史の浅いフィンランドの学校では、身体を動かしながら学べる美術、体育、音楽などの授業は通常クラスの生徒と一緒に学び、言語習得のレベルに合わせて他の科目の授業にも徐々に参加していく、というアプローチが試されている。また、グループワークを通じて生徒が共に教え合う協働学習の持つ可能性も、各国であらためて注目されている。
 
「分離」でも「同化」でもない、多文化共生社会における“インクルーシブ(包摂的)な教育”の追求は、これからも続いていくであろう。日本も、欧州各国が経験してきた課題や成功例から学び、移民受け入れの議論の中で生かしていかなければならない。